日本において、メンタルヘルスと関連する法律にはどのようなものがあるのでしょうか。
心理カウンセリングやメンタルヘルスに関する法律には様々なものがあります。
そこで、本コラムでは法律の観点から、心理カウンセリングやメンタルヘルスについて考えていきたいと思います。
労働安全衛生法
労働安全衛生法は労働者の安全と衛生についての基準を定めた法律です。
特に心理専門職や心理カウンセラーにおいて重要となってくるのがストレスチェックについてですが、このストレスチェックについて定めているのが労働安全衛生法になります。
労働安全衛生法は高度経済成長時に目ざましく発展を遂げたものの、多くの労働災害も発生してしまいました。
職場環境や仕事内容の急激な変化によって、労働者が心身ともにダメージを受けてしまったというわけです。そこで1972年に労働安全衛生法が成立したのです。
労働安全衛生法の主な目的は労働災害の防止です。
では、この「労働災害」とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。
労働災害とは、労働者の就業に係る建設物・設備・原材料・ガス・蒸気・粉じん等、又は作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡することを指します。
非常に幅広い定義ですが、労働者が仕事に関わる事由によって心身の健康状態を損なうことは全て労働災害であると考えることができます。
心理学の分野では RMR(Relative Metabolic Rate)という専門用語があります。
日本語では労働強度や作業強度などともよばれます。
これは、何らかの作業を行う時の生体負担の一つの指標であり、エネルギー代謝率ともよばれます。
RMRは作業を行うために消費される酸素需要量が基礎代謝量の何倍に当たるかを示すものであり、「RMR = 労働代謝量 / 基礎代謝量」として求めることができます(労働代謝量:当該作業時間内での全酸素消費量とその時間内での安静時酸素消費量の差、基礎代謝量:生命維持のための最小限の熱量)。
つまり、RMRは当該作業が基礎代謝量の何倍のエネルギーを消耗するかを示すものとなります。
このように、どのような業種・職種であっても、労働はエネルギーを伴うものであり、私たちは確実に消耗してしまうわけです。
このように、科学的根拠のある研究成果や理論として「仕事や労働の与える影響」は明確に定義されており、労働者を守る必要があるわけです。
労働の安全性を確保するためには、一人の労働者が努力するだけでは限界があります。
そこで、労働安全衛生法ではどのような体制で労働災害を防止するのかが定められています。
代表的な役職・肩書としては、総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・安全衛生推進者・衛生推進者・産業医・作業主任者・安全委員会・衛生委員会・安全衛生委員会などです。
これらの中でも特に産業医とは心理カウンセラーが関わることも多い職業ではないかと思います。
労働安全衛生法は計画的に労働災害防止に努めることを重視しています。
たとえば、2018年からの5年間を計画期間とする「第13次労働災害防止計画」というものがあり、これがちょうど、2023年末までの計画となっています。
この計画では「一人の被災者も出さないという基本理念の下、働く方々の一人一人がより良い将来の展望を持ち得るような社会」を目標として掲げています。
また、死亡災害については、死亡者数を2017年と比較して、2022年までに15%以上減少させることも目標として掲げられています。
特に重点とする業種の目標としては、死亡災害が多い建設業・製造業・林業とされています。
また、同じく死亡災害が多い陸上貨物運送事業・小売業・社会福祉施設・飲食店については、死傷者数を2017年と比較して、2022年までに死傷年千人率で5%以上減少させることを目標として掲げています。
労働災害や労働の安全性には当然、メンタルヘルスも含まれています。
労働安全衛生法では、仕事上の不安、悩み、ストレスについて職場に事業場外資源を含めた相談先がある労働者の割合を90%以上とすることを目標としています。
また、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合を80%以上、ストレスチェック結果を集団分析し、その結果を活用した事業場の割合を60%以上とすることを目標として掲げています。
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