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SNSと心理学の関係(1) 

私たちの生活になくてはならないSNSと心理学にはどのような関係があるのでしょうか。 

現在、SNSで世界中の人々と簡単につながることができるようになってきました。
実はこのSNSが誕生するきっかけの1つが社会心理学の実験であったことは、あまり知られていません。
元々「意外と世間は狭い」と感じるという感覚や経験が多くの人々の共通認識として存在していました。
これは日本に限ったことではなく、様々な文化・社会に共通するものであり、アメリカでは「大統領から6人」という言説が都市伝説的に語られていました。
これは誰でも知り合いの、知り合いの、またその知り合い・・・というように辿っていくと、6人以内で大統領に行きつくというものです。
これを心理学的に解明しようとしたのが、社会心理学者のスタンレー・ミルグラムです。 

スタンレー・ミルグラムはアメリカの社会心理学者であり、ハーヴァード大学で博士号を取得した後、イェール大学、ハーヴァード大学を経て、ニューヨーク市立大学の大学院センターの教授を務めている非常に著名な心理学者です。
ミルグラムはイェール大学時代に権威への服従に関する実験でも有名ですが、後のSNSの誕生のきっかけになった「六次の隔たり」についても実験をしています。
六次の隔たりとは、全ての人や物事は6ステップ以内で繋がっていて、たとえば「友達の友達のそのまた友達・・・」というようにつなげていくと、世界中の人々と間接的な知り合いになることができるという仮説です。
これは、70億人を超える人口で構成される世界が比較的少ない人数を介して繋がるスモール・ワールド仮説の一例とされており、SNSに代表されるいくつかのネットワークサービスはこの仮説を基盤にしています。
つまり、都市伝説である「大統領から6人」が「六次の隔たり」という科学的な仮説で説明が可能であるということです。 

「六次の隔たり」をより具体的に解説すると、たとえば「Aさんが44人の知り合いを持つとする。
Aさんの知り合いであるBさんが、Aさんとも互いにも重複しない知り合いを44人もち、Bさんたちの知り合いであるCさんたちがAさんともBさんたちとも互いにも重複しない知り合いを44人を持つ・・・」とすると、AさんからFさんまでの6次以内の間接的な知り合いは「44の6乗」となり、計算上は72億5631万3856人となり、地球の総人口70億人を上回ることになります。
これは、あくまで数学的な仮説でしかないわけですが、これを社会心理学の観点から、ミルグラムは実験で明らかにしました。 

ミルグラムが実施したのは、以下のような手順の実験でした。 

  1. アメリカのネバダ州とカンザス州に住んでいる196人に手紙を渡す。 
  2. 196人はこの手紙をネバダ州・カンザス州から1350マイル(約2100km)離れたマサチューセッツ州・ボストンに住む目標の人物に届けるという課題を課される。 
  3. 目標人物への手紙の届け方には制限があり、郵便で送ることはできず、知人に手紙を託し、さらにその知人が知り合いに託し・・・という形式で「人づて」で届けなければならない。また、その知人は氏名・年齢などを把握し、実際に会ったこともある直接的な知人に限定される。 

ミルグラムは、このような手順で手紙を届け、実験参加者と目標人物の間に何人を介在させれば到達できるかを検討しました。
実験の結果、介在者数の平均は6.2人であることが判明しています。
ただし、最終的に目標人物に辿り着いた割合は約22%であり、7割程度が目標人物に到達できずに終了してしまいました。
この実験結果は「大統領から6人」という言説が、それほど出鱈目なものではないということを示唆する結果となったのです。 

このミルグラムの実験はインターネットが普及する以前に行われたものでした。
その後、インターネットが誕生し、一般に普及していく過程で、オンライン上で国や地域、文化の異なる人々と自由にコミュニケーションを取ってみたいという機運が高まり、SNSが誕生していくことになります。
その際にスモールワールド仮説や六次の隔たりという現象は、インターネットでより簡単に実現可能なのではないか、本当に世界中の誰とでも6人を間に挟めば繋がれるのではないか、という考え方へと繋がっていきました。
「意外と世間は狭い」がインターネットによって「意外と地球は狭い」にまでなるかもしれないという感覚がSNSのシステム・サービスの根底にあったわけです。
そのため、SNS誕生の最初期のサービスの1つが「Six Degrees.com」であり、そのものずばり「六次の隔たり.com」という名称でした。
また、日本発の最初期のSNSサービスである「GREE」もまた、六次の隔たりの英語名に由来するものとなっています。 


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この記事を執筆・編集したのはこころ検定おもしろコラム編集部
「おもしろコラム」は、心理学の能力を測る検定試験である「こころ検定」が運営するメディアです。心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、検定に興味がある、学んでみたい人のために、心理学を考えるうえで役立つ情報をお届けしています。

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