コラム

日常用語も心理学では〇〇になる part9

2020.6.7

― 日常と科学の間にあるもの ―

心理学の辞書に掲載されている用語の中には、私たちが日常生活で当たり前のように使っている言葉を少し違った観点から捉えているものがあります。そんな「よく耳にする言葉の心理学的側面」について解説したいと思います。

①嫌悪

「嫌悪感」という言葉があるように、嫌悪とはネガティブな感情を示す言葉です。
感情心理学において、嫌悪は人間の感情の最も基本的な次元の1つとされています。
私たちは出来事に対して、快-不快の判断をすることがありますが、嫌悪の感情は不快感を引き起こす対象を避けようとする行動に伴って発生すると考えられています。

②好奇心

興味・関心と関係の深い用語として、好奇心という言葉があります。
心理学的に好奇心とは、何か新しい事柄などの刺激を求める傾向のことであり、遊びと同様に私たちの内側から起こり、行動の起点となる動機づけの要素であるとされています。
人間以外の動物にも好奇心が認められ、特に動物の子どもに顕著に認められます。
何か新しい事柄が好奇心の対象となる条件として、その事柄の持つ注意を引く「強さ」が個人(個体)にとってあまり大き過ぎないということがあります。
事柄の持つ注意を引く「強さ」が大き過ぎる場合、好奇心でなく不安や恐怖が引き起こされ、その事柄に近づいたり好んだりするよりも、避ける行動が発生しやすくなります。
逆に“目新しさ”が小さ過ぎると退屈な状態となり、この場合も接近・好ましさを引き起こさないことになります。
従って“ほどほど”の目新しさが好奇心を掻き立て、動機づけとその後の行動へとつながっていくのです。
ただし、目新しい事柄について近づき、情報を収集した後は、もう“目新しさ”がなくなるので、好奇心はずっと続くものではありません。

③才能

才能とは一般には、音楽やスポーツ、学問など特定の領域において、訓練によって将来的に優れた能力を発揮すると期待される素質のことを指します。
心理学では、「能力」「素質」「適性」「天才」など関連する概念が多く存在するので、あまり明確な区別はされていません。

たとえば「才能がある(ない)」という表現には、主として「生まれつきの」というニュアンスが強いです。
しかし「才能を発揮する」という表現には「生まれつきの」というよりも、その人が置かれている環境や特定の状況との相互作用というニュアンスが強くなります。
さらに「才能を伸ばす(つぶす)」という表現には、教育や生育環境によって「才能は変化する」ということを含まれています。

④仕返し

「仕返し」と聞くと、子どもっぽい「いじわる」のように聞こえるかもしれません。
一般的にはそのような意味で使われることも多いですが、心理学では少し違ったニュアンスで用いられます。

たとえば、2人の人間の間で何らかのゲームをしている場合に、直前の相手の行動パターンを次の自分のターンで選択するという戦略のことを仕返し(仕返し戦略)といいます。
つまり、相手の協力的な行動に対しては協力的に振る舞い、競争的な行動に対しては競争的に振る舞うということです。
「仕返し」と聞くと悪いイメージがあるかもしれませんが、心理学では相手が良いことをしたから、自分も良いことをする場合も「仕返し」になります。

⑤スピーチ

スピーチとは、単に人前で話をすることというイメージがあるかと思いますが、心理学では少し異なる側面から検討されています。
スピーチをする状況において、不安を感じる人は実は多くいます。
そのため、スピーチの際に感じる不安に対しては「スピーチ不安」という専門用語まであります。
スピーチは、話し手と聞き手の相互作用の有無によって2つに分けることができ、相互作用のない方が練習による不安低減が認められやすいとされています。
また、話し手・聞き手の間の相互作用がどのようなものであっても、聞き手に対して自分のイメージを上手に伝えられるかどうかが、不安の増減の鍵となっていると考えられます。

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