コラム

ストレスって、何?

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  • 2018/10/03

 ストレスの影響は身体だけではなく、心にも、そして考え方や物事の決め方・選び方など、実に様々な領域に及ぶことが判明しています。
 
 ストレスという言葉はよく耳にすると思いますが「結局、ストレスって何なの?」と思っている人は多いのではないでしょうか。心理学はずっとストレスの研究をし続けている分野であり、ストレスのことなら心理学による検討が広く、深く実施されています。

 心理学において、ストレスとは「身体的・精神的な安定に影響を与える出来事の総称」と定義されています。ストレスの原因となるものはストレッサー、ストレッサーへの抵抗から身体・心に現れるものをストレス反応とよびます。人間の精神状態はゴムボールに例えることができます。ストレスの無い状態では凹みや歪みの少ない球体ですが、ストレッサーが出現することによって、圧力を受けた分が凹んだり歪んだりします。しかし、人間の精神はゴムボールのように弾力性があるので、ストレスの無い状態に戻ろうとする機能があります。このストレッサーに抵抗して元の安定した状態に戻ろうとする作用をストレス反応とよびます。ストレッサーの出現によって、ストレス反応が生じるわけですが、このストレス反応によって人間の身体には様々な変化が起きます。心理学において、特に生理心理学という分野で人間の身体とストレスの関連について研究がおこなわれ、ストレス反応の影響は筋肉、骨格、内臓、神経、血管など様々な部位におよぶことが分かっています。

 ストレスに関する研究者の代表的な1人として、生理学者のハンス・セリエがいます。セリエはストレスの原因となるストレッサーを物理的ストレッサー、化学的ストレッサー、生物的ストレッサー、心理的ストレッサーの4つに分類し、これらの様々なストレッサーに対して人間を含む全ての生物は適応しようと試み、安定した状態を保とうとすると考えました。また、セリエはストレッサーに対する反応には警告期、抵抗期、疲憊期という3段階があると述べています。ストレッサーが出現することによって、一時的に抵抗力が低下する段階を警告期、その後、ストレッサーに対して身体が適応しようとして抵抗力が上がる段階を抵抗期、さらにストレッサーが長期間継続し、身体が限界に達して再び抵抗力が低下する段階を疲憊期としています。

 セリエはストレッサーがどのようなものであっても、人間の生理的機能は警告期、抵抗期、疲憊期という順に段階を経て変化するとし、これを汎適応症候群とよびました。汎適応症候群そのものは病気ではありませんが、この状態が長期間続く(疲憊期が長期間継続する)と、身体の抵抗力が低下し続け、病気のリスクが高まり、様々な疾患が発症すると考えられます。ストレス反応の結果が胃に強く影響した人は胃潰瘍となる可能性があり、呼吸器系(肺など)に強く影響した人は過換気症候群となる可能性があります。
 そして、最新の心理学研究の結果、ストレスの影響は人間の考え方や物事の決め方にも影響を及ぼすことが判明しています。慢性的なストレスと、それに伴ううつ病などの精神疾患になると、物事を決めるのに時間がかかり、間違った選択や決定をしてしまうことが増えることが判明しています。そして、それが新たなストレスとなるという悪循環を引き起こすわけです。さらなる研究の結果、慢性的ではなく、短期的なストレッサーであっても、その影響からリスキーな選択をしてしまう傾向が強くなることも判明しています。

 心身の様々な問題の原因となるストレスですが、現在の最新科学を駆使することで、ストレスは「目で見て確認し、数字で示すことができる」ものとなっています。なかでも特に最近注目されているのが、ウェアラブル心拍センサーによるストレスチェックです。心臓は交感神経と副交感神経の拮抗作用によってコントロールされており、これらの神経はストレスの影響を受けます。つまり、心臓の状態が分かれば、自律神経の活動が把握でき、ストレスなどについても測定・評価が可能となるわけです。ウェアラブル心拍センサーを活用することで、睡眠時の自律神経活動の測定、不安感情と自律神経活動に関する検討、従業員のストレスチェックへの利用、うつ病のクライエントの自律神経活動の状態測定・症状の変化と自律神経活動の関連など多岐にわたります。ウェアラブル心拍センサーによる分析は時系列的にストレスの数値化・視覚化を実施することが可能であり、ストレスが“どのように変化していったか”ということを検証することが可能です。小型かつ無線のウェアラブル心拍センサーによる自律神経活動の測定は、心理カウンセリング・心理アセスメントの様々な面において有益であると考えられます。また、もっと一般的な目的として、健康の維持・増進や疾患の予防などにおいて有効活用が可能であると考えられています。