対話と発展のための世界文化多様性デーと心理学には、どのような関係があるのでしょうか。
【目次】
・まとめ
日本では365日すべてに何らかの記念日が制定されています。その一つが、5月21日の「対話と発展のための世界文化多様性デー」です。この日は、2001年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)が「文化多様性世界宣言(Universal Declaration on Cultural Diversity)」を採択し、翌2002年12月の国連総会において、5月21日を「対話と発展のための世界文化多様性デー(World Day for Cultural Diversity for Dialogue and Development)」として制定したことに由来します。
対話と発展のための世界文化多様性デーは国際デーの一つであり、文化の多様性の価値をより深く理解し、その保護と発展、さらに文明間の対話を促進することを目的としています。この日は、美術館や博物館を訪れて異なる文化に触れること、映画・書籍・音楽などを通して多様な文化について学ぶこと、異なる宗教的背景をもつ家族や友人と食事を共にし、人生観を語り合うことなどを通じて、異文化理解を深める日とされています。
では、文化多様性と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。
心理学では、文化を含む人間の心と行動について、さまざまな角度から研究が行われています。多くの学問領域と同様に、心理学においても文化とは、知識・信仰・道徳・芸術・法律・慣習など、人間が社会の構成員として習得した能力や行動様式の総体であると定義されています。人間は国や民族、地域ごとに固有の文化を歴史的に発展・継承してきたため、それぞれの文化は独自の特徴をもつと考えられています。
文化を考察する上で重要な概念の一つが「文化差」、すなわち文化間の差異です。心理学的な文化差研究とは、心理学の知見や理論が文化を越えて妥当性をもつのかを、科学的手法によって検証するアプローチです。錯視、感情表出、精神発達の過程など、幅広い領域において文化差に関する心理学的研究が行われてきました。
文化多様性と心理学の関係に関する研究は、1950年代頃までさかのぼります。当初は進化論的・比較文化的観点から、文化差を発展段階の違いとして捉える研究が主流であり、西洋中心主義(エスノセントリズム)の色彩が強いものでした。現在では、このような研究姿勢は批判の対象となっています。
その後、1960〜1980年代にかけて文化心理学が確立され、異文化間比較研究が本格的に進展しました。文化差を数値化し、比較可能にした点は、これらの研究の大きな成果であるといえます。その結果、思考様式や認知のあり方が文化によって異なる可能性が示唆されました。
文化多様性の心理学的研究は、1980〜2000年代に発展期を迎えます。この時期には、東西比較研究において、分析的思考と全体的思考の違いが注目されました。西洋文化では対象を切り分けて分析する傾向が強い一方で、東洋文化では文脈や他者との関係性を重視する思考様式がみられるとされています。こうした研究は文化神経科学の誕生にもつながり、脳活動レベルで文化差を検討するという新たな研究アプローチも展開されるようになりました。
このように、文化多様性に関する心理学的研究は、多角的な視点を取り入れながら発展してきました。心理学の理論や仮説は基本的には普遍的であるとされる一方で、その表出や実践のあり方は文化に依存するという考え方が重視されています。
また、実社会への応用として、ビジネス分野では異文化マネジメントやグローバル・マーケティング、教育分野では多文化教育や異文化理解、医療・臨床分野では文化に配慮したカウンセリングや文化的コンピテンスなどが挙げられます。文化多様性研究の中核には、文化と環境の相互作用、個人の内面だけでなく社会・言語・制度が心理を形成する過程を明らかにするという心理学的視点があります。
このように、心理学では文化や多様性についても多様な角度から研究が行われており、対話と発展のための世界文化多様性デーが掲げる理念と深く結びついているといえるでしょう。

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