コラム

生活

吊り橋の日と心理学の関係

2026.7.31
  • こころ検定2級
  • こころ検定1級
  • 社会心理学

【目次】

8月4日「吊り橋の日」の由来

「吊り橋効果」と誤帰属のメカニズム

最新研究が示す「ブースター効果」

「知っている」ことが効果を弱める

 

日本一の吊り橋がある村の記念日

日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。84日は「吊り橋の日」に制定されています。これは日本最長の鉄線の吊り橋である谷瀬の吊り橋など、村内に約60ヵ所の吊り橋があり、その数は日本一といわれる奈良県・吉野郡・十津川村が制定したものです。日付は「は(8)し(4)」(橋)と読む語呂合わせから来ています。十津川村は急で険しい斜面が多いことから、作られた吊り橋は人々にとって切っても切れない重要な位置づけにあります。毎年、この日は谷瀬の吊り橋の上で太鼓を叩く揺れ太鼓という、つり橋まつりが開催されており、吊り橋に感謝をする日としています。では、吊り橋と心理学にはどんな関係があるのでしょうか。

有名な「吊り橋実験」とは何か

社会心理学や生理心理学の有名な理論として、吊り橋効果というものがあります。人間はコミュニケーションにおける印象形成などの認知的な活動において、「なぜ、そう評価・判断したのか」という理由を考えます。これは帰属とよばれ、自他の感情・態度・行動の原因に対する推論です。しかし、帰属が誤ってしまう誤帰属という状態が発生することがあります。誤帰属に関する実験として、ドナルド・ダットンとアーサー・アロンが実施した、吊橋と固定された橋を使ったものがあります。これがいわゆる「吊り橋効果」「吊り橋実験」とよばれるものです。

この実験では、実験参加者は不安定に揺れる吊橋を渡る群と、しっかりと固定された橋を渡る群の2群に分けられ、それぞれ橋の中央へ向かって進みます。橋の中央部分には実験協力者の女子学生がおり、参加者にアンケートへの協力を依頼してきます。アンケート回答後、協力者の女子学生は参加者に対して「もし、アンケート結果が気になるのであれば、この電話番号に連絡してくれれば私が結果をお伝えします」と述べ、電話番号の書かれたメモ用紙を渡そうとします。

実験では、グラグラと揺れる吊橋としっかりと固定された橋において、電話番号の書かれたメモを受け取った参加者の割合と、実際に電話をかけてきた参加者の割合を検討しています。実験における条件の違いは、吊橋と固定橋という点のみです。しかし、メモを受け取った割合にはほとんど差がないものの、実験後に電話をかけてきた割合には大きな差が発生するという結果となっています。

この差は、アンケートを実施する女子学生に対する印象(魅力)が、吊橋と固定橋というコミュニケーションの場所・状況の違いによって変化したからだと考えられています。吊橋は高い場所にあり、常にグラグラと揺れており、参加者の心拍数は増加します。この状態で女子学生からアンケート調査への回答を依頼されますが、参加者は自分がドキドキしているという生理的な状態の原因を、「不安定な吊橋」という要因ではなく、「女子学生の魅力」という要因に帰属していることになります。

つまり、吊橋を渡った参加者の半数が、自身の心拍数増加という生理的変化が女子学生の魅力によるものであると帰属し、もう一度、女子学生とコミュニケーションを取るために電話をかけたのではないかと考えられます。一方で、固定橋は揺れることもなく安定しているので、心拍数への影響がなく、電話をしてきたのは純粋にアンケート結果への興味からだと考えられます。

 

 

好意ゼロからは生まれない

では、それから50年以上が経った現在、吊り橋効果の最新の研究では、どのようなことが判明しているのでしょうか。まず、実験条件として登場する異性の及ぼす影響として、元々、魅力的な人物でなければ成立しないということが判明しています。近年の研究において、吊り橋効果は他者(異性)への好意的な態度をゼロから作り出すことができるわけではなく、既にある程度存在している好意的な態度を増幅させる、ブースターとしての効果を持つだけではないかということが示唆されています。

また、元々ポジティブな印象がある相手に対しては、スリルによってその魅力がより強調され、好意的な態度はさらに増加します。しかし、ネガティブな印象がある相手に対しては、逆にスリルによる生理的興奮が嫌悪感の正体だと認知されてしまい、相手への不快感が強まってしまうことが判明しています。

有名になりすぎた効果の逆説

また、吊り橋効果があまりにも有名になってしまったことが、別の影響を及ぼしているということも判明しています。私たちはどこかで、吊り橋効果や吊り橋実験について見聞きしている可能性が高いです。その結果、「ドキドキの原因がスリルにある」というメカニズムをあらかじめ知ってしまっていることで、脳が誤った解釈(誤帰属)をしにくくなるという現象が報告されています。このように、吊り橋効果に関する研究はその後も進められており、新たに判明したこともあるのです。

 


 

著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはこころ検定おもしろコラム編集部
「おもしろコラム」は、心理学の能力を測る検定試験である「こころ検定」が運営するメディアです。心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、検定に興味がある、学んでみたい人のために、心理学を考えるうえで役立つ情報をお届けしています。