世界翻訳の日と心理学には、どのような関係があるのでしょうか
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日本では365日すべてに何らかの記念日が制定されています。9月30日は「世界翻訳の日」に制定されています。これは翻訳家の国際的な団体であり、翻訳家の権利と表現の自由を維持するために活動を行う国際翻訳家連盟(International Federation of Translators:FIT)が制定したもので、英語表記では「International Translation Day」となります。
日付の由来は、キリスト教の聖職者・神学者で、聖書をラテン語に訳したことで知られるヒエロニムスが亡くなった日にちなんでいます。ヒエロニムスは四大ラテン教父の一人とされており、正教会・非カルケドン派・カトリック教会・聖公会・ルーテル教会で聖人とされています。
382年頃、ローマ教皇の要請で、それまでのギリシア語聖書から新約聖書のラテン語訳の統一を行い、さらに旧約聖書もギリシア語およびヘブライ語の原典からラテン語に訳した功績があります。
この日は、国際連合により2017年5月の総会で国際デーの一つである国際翻訳デーとして制定されており、翻訳家など言語の専門家の仕事に敬意を表する機会とすることが目的となっています。
また、この日は日本では一般社団法人・日本翻訳連盟(Japan Translation Federation:JTF)により「翻訳の日」に制定されており、同じく翻訳に関わる人々の活動を広く浸透させ、推進することが目的となっています。翻訳とは、言語の異なる各国を結び付け、対話・理解・協力を促進し、発展に貢献し、世界の平和と安全を強化する上で重要な役割を果たすものです。専門的な翻訳は、国際的な公の会話などの意思疎通において、正確性や生産性を保つためにも不可欠となっています。
では、心理学と翻訳には、どのような関係があるのでしょうか。
翻訳については、心理学の中でも特に認知心理学や言語心理学で研究が進められています。たとえば、私たち日本人は、第一言語である日本語に次いで、英語の勉強に最も多くの時間を割いています。英語と日本語は、文字体系(アルファベットと漢字・仮名)、語順(SVOとSOV)、そして文化的背景が根本的に異なるため、心理学や脳科学の実験において、非常に興味深い言語ペアの一つとして研究されてきました。
これまでの心理学の研究で明らかになっていることとして、バイリンガルや翻訳者が片方の言語を使っている際にも、もう片方の言語が無意識レベルで常に活動しているということが判明しています。また、英語のテキストを目にした瞬間、日本語の単語や概念も脳内で同時に引き出されていることも判明しています。逆に、日本語から英語への翻訳の際は、日本語の察する文化や文脈に依存した曖昧な表現を、英語特有の論理的・構造的(主語と述語を明確にする)な枠組みへと組み替える作業が発生することが判明しています。
ただし、私たちの脳には、今現在使っていないほうの言語が表に出てこないよう、ブレーキを踏み続けるという機能があります。このブレーキ役を担うのが、脳の前頭葉を中心とした実行機能であることが判明しています。
心理学の研究では、翻訳における負担についても研究が実施されています。言語を翻訳している際、脳には非常に強い認知的負荷がかかることが判明しており、2つの言語を話すことと翻訳という作業を行うことでは、脳にかかる負荷の質と量が異なることが分かっています。
人間が一時的に情報を保持・処理できる容量であるワーキングメモリには限界があり、翻訳時は原文の理解・意味の概念化(言語から抽象的な意味への変換)・ターゲット言語への再構築を同時に行うため、脳のメモリを大量に使用してしまいます。例えば、英語からフランス語への翻訳(言語構造が似ている)に比べ、英語から日本語への翻訳は語順が完全に逆(SVOとSOV)になってしまいます。そのため、日本語の文末(「〜ではない」「〜なかった」など)が出るまで、英語の構造のまま訳出を待たなければならないケースが多く、ワーキングメモリへの負担が跳ね上がりやすいという特徴があります。
このように、心理学では翻訳についても様々な角度から研究が進められています。
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