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貧困撲滅のための国際デーと心理学の関係

2026.10.15
  • 経済心理学・行動経済学
  • 社会心理学
  • ストレス

貧困撲滅のための国際デーと心理学には、どのような関係があるのでしょうか

【目次】

・10月17日「貧困撲滅のための国際デー」とは

・慢性的なストレスと「欠乏」が奪う認知資源く

・無力感・スティグマ・社会的孤立

・心と体の悪循環と、抜け出しにくさの正体

 

パリから始まった貧困撲滅の日

 日本では、365日すべての日に何らかの記念日が制定されています。10月17日は「貧困撲滅のための国際デー」です。これは1992年12月の国連総会で制定された国際デーの一つで、英語表記は「International Day for the Eradication of Poverty」です。

 この日は、フランスに拠点を置くNGO「国際運動ATD第四世界」の発案で、多くの国ですでに「極貧に打ち克つための世界デー」として定着していました。そのため、国連総会でこの日を「貧困撲滅のための国際デー」とすることが宣言されました。目的は、貧困の撲滅を目指し、人権と尊厳の尊重を呼びかけることです。毎年この日に合わせて、国連事務総長からメッセージが発信されます。

 この日の原点は、1987年10月17日の出来事です。貧困・飢餓・暴力・恐怖の犠牲者に敬意を表するため、約10万人がフランス・パリのシャイヨ宮前の「人権広場」に集まりました。では、貧困と心理学にはどのような関係があるのでしょうか。

 

お金の不安が脳を占有する

 貧困が人間に及ぼす心理的影響として最も大きなものは、慢性的なストレスです。貧困状態では、食費や住居費への不安、将来の不確実性、失業への恐怖、借金、家族を養う責任などが毎日のように続きます。通常のストレスは休息によって回復します。しかし慢性的なストレスでは、コルチゾールの分泌、交感神経の活動、炎症反応などが長期間高い状態になりやすくなります。その結果、不安・抑うつ・疲労・睡眠障害などが起こりやすくなります。

 認知機能にも影響が及びます。近年注目されている概念に「欠乏(Scarcity)」があります。これは単にお金がない状態ではなく、お金の不足について四六時中考え続けている状態を指します。例えば、来月の家賃、今日の食費、電気代、子どもの教育費などについて常に考えていると、脳のワーキングメモリーがその問題に占有されてしまいます。その結果、集中力・判断力・計画性・注意力の低下が起こりやすくなります。

 重要なのは、この状態が生じる理由です。もともとの認知機能が低いからではありません。貧困による欠乏が認知資源を奪うことによって生じるのです。

 

 

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貧困スティグマと自尊感情

 長期間の貧困状態では、次のような考えが形成されていきます。

  • 「どうせ頑張っても変わらない」
  • 「努力しても意味がない」
  • 「将来に期待できない」

 

これは学習性無力感とも関連しています。この状態では、求職活動、学習活動、資格取得、健康行動への意欲も低下しやすくなります。

 貧困は単なる経済状態にとどまらず、社会的比較も生み出します。周囲より貧しい、欲しい物が買えない、子どもに十分なものを与えられないといった経験は、恥・劣等感・自己否定につながります。これは「貧困スティグマ(Poverty Stigma)」と呼ばれる状態で、近年の心理学研究でも非常に重要視されています。最近の研究では、貧困スティグマが次の三つと関連していることが示されています。

  • 自尊感情の低下
  • 孤独感の増加
  • 抑うつの発生

 

また、貧困状態では経済的な余裕がなくなるため、外食・趣味・旅行・地域活動への参加などが難しくなります。その結果、社会的なつながりが減り、孤独感が強まります。そして、社会的孤立そのものがうつ病や認知症のリスクを高めることも知られています。

 

 

心と体を同時に蝕む貧困

 貧困は、心理面やメンタルヘルス面だけでなく、身体の健康にも悪影響を及ぼすことがわかっています。貧困状態では、睡眠不足・栄養不足・運動不足・慢性炎症が生じやすくなります。これらがさらに、抑うつ・不安・疲労感などを悪化させます。つまり、貧困による身体の健康の悪化が、メンタルヘルスの悪化を促進してしまうのです。

 では、なぜ貧困から抜け出しにくい状態に陥ってしまうのでしょうか。近年の研究では、次のような要因が重なることが指摘されています。

  • 認知機能の低下
  • メンタルヘルスの悪化
  • 希望や自己効力感の低下
  • 将来志向の弱まり

 

これらが重なると、就職活動、教育への投資、健康管理などが難しくなります。その結果、貧困から抜け出しにくくなる悪循環が生じます。ただし、これは本人の努力不足を意味するものではありません。貧困という環境が心理や認知に及ぼす影響の結果として、理解すべきものです。

 このように、心理学では貧困についてもさまざまな角度から研究が進められています。

 

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著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはこころ検定おもしろコラム編集部 「おもしろコラム」は、心理学の能力を測る検定試験である「こころ検定」が運営するメディアです。心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、検定に興味がある、学んでみたい人のために、心理学を考えるうえで役立つ情報をお届けしています。