心理専門職には、いくつか代表的な仕事があり、そのうちの1つが教育職です。
心理学に関する知識や技術を活かして社会で活動する人のことを、心理専門職とよびます。
基本的には大学の心理学科を卒業し、大学院に入学して修士課程・博士課程を修了した方々が心理専門職として活躍していることが多いです(※学部卒業で活躍している方もいます)。
大学の学部では基本的な知識である基礎心理学や心理統計学に加えて、心理学研究法、心理学実験法、心理検査学などについて学び、3年・4年時にゼミに入ります。
ゼミでは、指導教官となる教授から研究指導を受けながら、卒業論文を書くための実験や調査を実施します。
その後、大学院に入学した場合は、より専門的な内容を学び、さらに高度な内容の修士論文を書くために実験や調査を行います。
このような過程を経て、心理学の専門家としての育成が進んでいきます。
心理専門職の重要な仕事の1つに教育があります。大学で教えることが多いですが、他にも専門学校や、資格学校などで教えることもあります。
また、大学院受験や心理学科への編入試験などの受験対策の講座を担当したり、カルチャーセンターで教えることなども心理学における教育業務となります。
最近では、こころ検定のように高校生を対象とした心理学教育もスタートしています。
心理学における教育には、個別の様々な分野について講義をするものがありますが、それ以外にも、心理学分野に特有な教育業務があります。
たとえば、教育相談という業務があります。
教育相談とは、幼児・児童・生徒の学校教育場面における様々な不適応行動や問題行動、情緒障害に適切な援助の手を差し伸べ、児童・生徒らの学校生活への適応を図ることを目的として行われるものです。
教育相談を担当する専門家は様々ですが、現在のところ日本では、教育相談担当教師や生徒指導担当教師、スクール・カウンセラーなどです。
教育相談で扱う問題は多岐にわたっており、情緒障害等の重症のケースも多いので、このような場合は、区や市町村の教育相談室にいる心理カウンセラーと上手に連携をとりながら指導や治療・支援を進めていきます。
一般的に最近は教育相談を担当している教師をはじめとして、教師の力量として、カウンセリング・マインドを求める傾向が強まっています。
そのため、教師はカウンセリングの理論と技法を修得し、児童・生徒を共感的に理解し、問題行動の予防に努めたり、問題行動の指導や治療・支援に当たるのが適切であるという考えが学校教育に浸透してきました。
しかし、ここで、教師がいくらカウンセリングについて学び、それを教育相談の実践場面に活用しようとしても、現場の声としてはかなり難しい業務であり、高いパフォーマンスで遂行するには無理があるということが指摘されています。
最近注目を集めている教育業務として、リカレント教育があります。
リカレント教育とは、学校を卒業し、社会人になってからも高等教育を繰り返して受けることができる教育システムのことを指します。
リカレントとは「循環する」とか「再発する」という意味で、繰り返し教育や再教育ということです。
生涯学習の必要性が唱えられるのに呼応して、成人や職業人が新しい技術や知識を学べる教育システムが求められてきており、欧米で定着してきた考え方です。
この考え方が日本でも1980年頃から推奨され、その過程で放送大学の設置や大学の社会人入学制度・大学院派遣社員(教員)・夜間大学院の開設・短大および専門学校からの編入枠の拡大などのように、正規の修学制度の整備が進められています。
高校3年生の時に大学の心理学科を受験しなければ、心理学の専門的な教育を受ける機会がなかった時代もありました。
しかし、現在ではリカレント教育の普及によって、社会人になった後でも専門的な心理学教育を受けることができる窓口が増えています。
そして、このようなリカレント教育の中で、心理専門職が教壇に立つ機会も増えています。
心理専門職の仕事については、こころ検定1級(メンタルケア心理専門士)のテキストであるカウンセリング技法の第1章で概観しています。ご興味・ご関心がある方は、是非、勉強してみていただければと思います。
この記事を執筆・編集したのはこころ検定おもしろコラム編集部
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