コラム

様々なメンタルへルス・セルフケア(4)

2022.7.14

メンタルへルスを維持・向上させるための方法には、自分一人でも実行できるセルフケア・アプローチがいくつかあります。
手軽に実行できるものでも、科学的なエビデンスに基づいたものには効果があることが判明しています。
本コラムでは、前回に引き続き、そのうち、いくつかを紹介していきたいと思います。 

10. イメージによるセルフケア 

私たちは頭の中で様々なイメージ(想像)をすることがあるかと思います。
実はイメージには悩みや葛藤による悪影響に対する「クッション」としての効果があることが判明しています。
特に積極的にイメージをするアクティブ・イマジネーションが重要であることが分かっています。
なんとなく、ぼーっと考え事をするのではなく、積極的に物語性のあるイメージを膨らませていくことが重要です。 

イメージによるメンタルケアは、イメージ・リハーサル法というアプローチとして確立されています。
イメージ・リハーサル法は、特定の場面および、そこでの行動や心理状態をイメージし、繰り返し頭の中で再現することによる治療・支援の方法です。
イメージ・リハーサル法は、特に視覚的なイメージの体系的な活用が強調されるものとなっています。
イメージ・リハーサル法は主に、スポーツや芸術における技能学習や「あがり」の防止、心理療法におけるメンタル不調(神経症)や習癖の治療・支援などの目的に活用されています。

日常生活において、リハーサルができない時や、現実の場面では過度の不安や緊張が生じて適応的な行動が困難な場合などには、特にイメージ・リハーサル法が有効であることが判明しています。
イメージ・リハーサル法の実施は通常の意識状態でも可能ですが、催眠状態下や自律訓練法による暗示下などの状況でも効果的であることが判明しています。
催眠療法や自律訓練法とイメージ・リハーサル法を併用することで、より鮮明な視覚的イメージとそれに伴う身体感覚や心理状態の変化を生じさせることができます。
イメージ・リハーサル法は、心理療法の技法としては専門家の指導が不可欠でありますが、しっかりと習熟することができれば、自己学習の方法として、時と場所を選ばず1人で実施できる利点があります。
そのため、セルフケアの方法としても、活用することができるわけです。 

イメージ・リハーサル法と並んで、メンタル・リハーサルというものがあります。
メンタル・リハーサルは、イメージを活用するものの、より「リハーサル」という部分を強調したものです。
そのため、いわゆるファンタジーな事柄ではなく、現実的な場面を想定したイメージによるリハーサルを活用するのが、メンタル・リハーサルなのです。
メンタル・リハーサルはセルフ・トークや自己教示の要素が強く、自分自身で完結する形でリハーサルをすることが重要な要素となっています。 

11. 柔軟な思考 

思考を柔軟にすることは、メンタルヘルスにおいて重要です。
逆に思考が柔軟ではない状態は、うつ病とも強く関連することが判明しています。
思考を柔軟にするためには、まずは誰にでも存在する「考え方のクセ」を見極めることが重要です。
そこで大切な要素となってくるのは、スキーマと自動思考という概念です。
スキーマとは、自分自身について抱いている最も中心的な概念であり、普段は意識することはできないものの、認知の歪みの原因となる記憶という位置づけであり、中核信念ともよばれています。

このスキーマから導かれたルールや思い込みを含んだ信念が媒介信念です。
そして、中核的なスキーマから媒介信念を経て出現するのが自動思考です。
自動思考は自動的・瞬間的によぎる思考であり、うつ病などの場合は不適応的でネガティブな思考が自然に湧いてきてしまうため、認知療法・認知行動療法によって適応思考へと修正させるというアプローチが取られることが多いです。
つまり、柔軟な思考を身に着ける過程は、そのまま認知行動療法のアプローチと同じということなのです。 

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