コラム

活用

感情とは何か? <26/6リライト>

2026.6.18
  • こころ検定4級
  • 認知心理学

感情とは、科学的に考えた場合、一体どのようなものなのでしょうか。

【目次】

感情と言葉のズレを解く

感情研究はダーウィンから

感情は認知から生まれる

日本人の感情は抑える文化(2026/6/18新規追加)

 

感情と言葉のズレを解く

感情とは、科学的に考えた場合、一体どのようなものなのでしょうか。

一言で「感情」といっても、日本語・外国語ともに関連する用語は多種多様であり、感情をどの範囲に規定するか、また用語をどのように用いるかによって、ニュアンスが異なります。

たとえば英語では「emotion」という用語が一般的に用いられますが、「affect」という言葉もあり、「emotion」の上位概念が「affect」であると見なされる場合があります。
日本では、「emotion」という用語における動的な側面を強調する場合は「情緒」や「情動」と訳し、「feeling」を「感情」と訳すことが一般的でした。

1992年に発足した日本感情心理学会では、「感情=emotion」を学術用語として使用すると定義しています。
ただし、日常用語として用いられる「感情」は、感情の意識化された主観的成分を強調して用いられる場合が多く、emotionというよりも、affectaffection)やfeelingといった英語に近い意味で用いられることが多いという違いがあります。

感情研究はダーウィンから

感情の心理学的研究の先駆けとなったのは、ダーウィンの『人及び動物の表情について』という著作であるとされています。
ダーウィンは、感情は進化の長い淘汰の産物であり、人間を含む動物は、系統発生的に連続した感情に固有の身体反応・生理反応をもつと考えました。
このダーウィンの考え方に影響を受けた理論・仮説として、心理学者ジェームズが中心となって提唱した感情の末梢説(ジェームズ=ランゲ説)、心理学者キャノンが中心となって提唱した感情の中枢説(キャノン=バード説)、さらにジグムント・フロイトが提唱した、ヒステリーを感情の力動的特性から説明する理論などがあります。

その後、ダーウィンやジェームズらの影響を受け、心理学者トムキンスは、人間の表情と感情に関する理論である顔面フィードバック仮説を提唱しました。
また、トムキンスの弟子である心理学者イザードは感情の心理進化説を提唱し、心理学者エクマンは感情の文化説を提唱しています。
さらに、より積極的・具体的に感情を進化論から考えた研究者として、心理学者プルチックが知られています。
これらの感情に関する理論が発展していった背景には、世代や人種、国や文化を超えて、ある程度共通するものとしての「基本感情」が存在することが、研究によって明らかになった点が大きく影響しています。

さらに、心理学の中で認知心理学の分野が発展するにつれて、感情の研究は認知との関係から進められるようになりました。

感情は認知から生まれる

心理学者シャクターが提唱した認知説の影響を受けた心理学者アーノルドは、感情の出現に先行する事態評価の重要性を指摘しました。
同様に、心理学者ラザラスは、事態評価を個体の健康的生存の可能性に関する一次評価と、対処可能性に関する二次評価に分けて論じました。
これらは、感情は感覚刺激によって直接喚起されるものではなく、事態の評価という認知過程を経て出現するという考えに基づいています。

私たちは、何らかの出来事を知覚(見聞き)し、その出来事について評価(自分にとって都合が良いか悪いか)を行います。
そして、都合が良ければポジティブな感情、都合が悪ければネガティブな感情が生じます。
つまり、突然感情だけがふっと湧き出すことはほとんどなく、何らかの出来事と、それに対する認知というプロセスが、感情の発生にとって欠かせないものだといえます。

出来事や認知は「感情が発生する前」に関する事柄ですが、「感情が発生した後」の過程も重要です。特定の感情が、特定の行動を引き起こす場合があるためです。
たとえば、怒りの感情は攻撃行動と関連が強く、恐怖の感情は逃避行動を引き起こすことが多いとされています。

日本人の感情は抑える文化(2026/6/18新規追加)

最新の感情心理学に関する世界規模の横断的研究では、感情表現は文化によって大きく異なることが改めて注目されています。例えば、欧米では感情表現を重視するのに対して、中南米では感情共有が豊かであり、東アジアでは感情的な調和を重視しているという特徴があります。その中で、日本は東アジアに位置するものの、感情抑制を重視するという特徴が認められています。特に日本における感情抑制とは、空気を読むとか、和を乱さないという方向性のものであり、文化が感情調整に大きな影響を与えていると考えられます。そのため、欧米などのように感情を強く表現することが健康であるという考え方は、日本人には必ずしも当てはまらないことが判明しています。

また、アンガーマネジメントが注目を集めている昨今、感情心理学における重要なテーマとして、感情をどうコントロールするかというものがあります。最新研究では、感情コントロールについて、ポジティブな方向性のものとして、リフレーミング・マインドフルネス・運動・睡眠・ソーシャルサポートなどが挙げられます。一方でネガティブな方向性のものとして、反すう・感情抑圧・回避・孤立などが挙げられます。

さらに、感情とAIに関する研究も急速に進んでいます。AIが表情・声・文章・バイタルセンシングなどから感情を推定するという研究は、特に発展が目覚ましい分野です。ただし、AIが本当に人間の感情を理解できているのかについては議論が続いています。現状の結論としては、AIは感情パターン認識はかなり高精度で実施できるものの、感情を実際に感じているわけではないという考え方が主流となっています。

感情心理学については、『こころ検定4級』の第6章で概観されていますので、興味・関心のある方は、ぜひ学習してみてください。

 

・初回投稿:2023年1月19日 

・リライト及び新規追加:2026年6月18日 

 


 

著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはこころ検定おもしろコラム編集部
「おもしろコラム」は、心理学の能力を測る検定試験である「こころ検定」が運営するメディアです。心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、検定に興味がある、学んでみたい人のために、心理学を考えるうえで役立つ情報をお届けしています。