コラム

キスがもたらす心理的効果 Part9-2

2020.8.9

心理学の研究は一風変わった側面から物事を捉え、面白い結論を導き出しているものがあります。

心理学に関する研究は、私たち人間の“滑稽さ”や“上手く行かない歯がゆさ”についても、様々な角度から教えてくれます。

<キスがもたらす心理的効果>

木俣肇、ヤロスラヴァ・デュルディアコヴァ、ペーター・ツェレツ、ナターリア・カモドョヴァ、タティアナ・セドラーチコヴァ、ガブリエラ・レピスカ、バルバラ・スヴィエジェナ、ガブリエル・ミナーリクは国際的な研究として、キスのもたらす心理学的な影響について検討しています。

キスなどの親密な人間関係の間で実施される相互行動について、生物学的・医学的なメリット(利益)や心理学的な影響について研究しました。

木俣らはアトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎の患者らに恋人らと30分キスをしてもらい、キスの前後でアレルギー反応の強度を検査したところ、キスの後ではアレルギー反応が弱まったことが明らかになった。

アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎はストレッサーの影響を受けるものであり、免疫力にも大きく左右される疾患である。

ストレスの影響で免疫力が低下すると、人間は様々な疾患を発症しやすくなります。

これは、単に風邪をひくというなどの場合もあります。

また、普段なら唾液や胃液に含まれる殺菌作用の効果で、食物に含まれるウィルスや雑菌は身体に害を及ぼさないようになっていますが、免疫力が低下すると、普段は平気なはずのウィルスや雑菌でも身体に害が及んでしまいます。

さらには、元々、個人の特徴として身体の弱い部分にストレスの影響が出ることもあります。

喘息の人は、ストレスの影響で咳がひどくなったり、前述のようなアトピー性皮膚炎の人はアトピーがひどくなってしまうことがあります。

逆に言えば、ストレスが低下し、リラックスした状態になれば、自然と免疫力が向上し、疾患にかかりにくくなったり、症状が治まったりするわけです。

木俣らは、親密な間柄の他者とのスキンシップ、特にキスなどの特別な行動が、免疫力を高め、ストレス低減・リラックス向上につながるということを証明したのです。

ただし、ここで重要な条件は「親密な間柄」というポイントです。

木俣らは実験条件として、親密な間柄の恋人等ではなく、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎の同じ患者同士でも30分間の抱擁を実施しました。

しかし、この条件では症状の緩和は認められませんでした。

つまり、ただ単にキスや抱擁をすれば良いというのではなく、社会的な関係性としての親密さが重要であるということです。

私たちは他者を認知する際に、親密さを1つの重要な要件としています。

この認知が心理的な効果を及ぼし、なおかつキスや抱擁などの行動が伴うことで、はじめてストレス軽減・リラックス向上という効果が起きるわけです。

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この記事を執筆・編集したのはこころ検定おもしろコラム編集部
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