文化の日と心理学には、どのような関係があるのでしょうか
【目次】
・まとめ
日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。11月3日は「文化の日」に制定されています。これは1946年11月3日に平和と文化を重視した日本国憲法が公布されたことを記念して、1948年に公布・制定された祝日法であり、国民の祝日に定められたものです。祝日法において、この日は自由と平和を愛し、文化を進めることを趣旨として明記されています。ちなみに、戦前は明治天皇の誕生日であることから、明治時代には天長節、昭和時代には明治節という名称の祝日でした。
現在、文化の日では毎年、皇居で文化勲章の親授式が行われています。また、博物館や美術館の中には入館料を無料にしたり、様々な催し物を開催する所もあります。そして、日本武道館で全日本剣道選手権大会が開催され、NHKで生放送されています。また、文化の日を中心に文化庁主催による芸術祭が開催されています。
では、文化と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。
心理学では文化についても様々な角度から研究が実施されています。まず、心理学などの多くの学問領域において、文化とは知識・信仰・道徳・芸術・法律・慣習など人間が社会の構成員として修得した全ての能力と習慣の複合体と定義されているという前提があります。そして、人間は国・民族・地域に固有の文化を歴史的に発展・継承してきたため、個別の文化がそれぞれの特徴を持っていると考えられています。そして、文化を考える上で文化差という文化間の差異が重要となります。心理学の知見が文化を越えて妥当性をもつかどうかを科学的手法により確かめるのが心理学的な文化差に関するアプローチとなっています。代表的なところでは、錯視・感情表出・精神発達の過程など幅広い領域で文化差の心理学的研究が実施されています。
文化と心理学の接点として、文化剥奪という概念があります。文化剥奪とは、人間社会で通常期待される言語・技術・道具などの文化的な環境刺激や活動が欠けている、もしくは不利な条件におかれている状態のことを指します。極端な場合として、児童虐待による隔離下で育ったケースなどが文化剥奪の例です。しかし、アメリカ社会において貧困や社会階層などの不利益、あるいは施設成育などの条件によって、幼児期の家庭環境が提供する言語経験や知的な刺激が限定されることによって発達上に遅れが生じるという問題がより具体的かつ社会問題として注目を集めたことがありました。特に発達の初期や臨界期・敏感期に文化的な環境に欠損が生じると知能の発達や後の学業成績などに支障をきたすと考えられています。文化的に貧しい家庭環境に育った児童が就学後に学習に困難をきたし学校での失敗経験につながりやすいという問題がアメリカでは特に大きな社会問題となっていました。そこで、就学前からの補償教育を実施し、サポートすることが進められました。それがアメリカで実施されたヘッドスタート計画であり、この計画によって企画・展開されたのがセサミストリートという子ども向けの教育番組です。
文化と心理学の関係は心理カウンセリングにおいても展開されています。異なる文化圏にまたがる生活経験が原因・きっかけとなって生じる不適応のサポートのための心理カウンセリングの総称として異文化カウンセリングというものがあります。これは留学や出張、婚姻などによる異文化圏への移住がきっかけとなった不適応を対象としています。精神的な健康度の高い人であっても、用いる言語や基本的生活習慣などが極端に異なる環境にさらされれば、カルチャー・ショックや孤独感を覚えることになります。そのようなエピソードが不適応のきっかけであるタイプと既にある文化に適応しつつある自分の中でどの程度独自性を保つかというアイデンティティの葛藤が実存的な悩みとなる場合もあります。そこで、どのような心理カウンセリングの方法が適しているかはクライエントの文化圏による違いがあると考えられるため、異文化カウンセリングが重要となると考えられています。また、実際のカウンセリングにおいても、カウンセラーが文化背景の違いについてよく自覚した上で様々な文化における思考様式や価値観を尊重できる柔軟な態度が必要です。
このように心理学においても、文化は様々な観点から研究・実践が進められているのです。

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