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日本には365日の全てに何らかの「記念日」が制定されています。4月25日は「DNAの日」に制定されています。これは1953年に分子生物学者のジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックらがDNAの二重螺旋構造に関する論文を科学雑誌『ネイチャー』に発表したことがきっかけとなっています。
そもそもDNAとは「Deoxyribo Nucleic Acid」(デオキシリボ核酸)の略であり、核酸の一種で地球上の多くの生物において遺伝情報の継承と発現を担う高分子生体物質です。
DNAはデオキシリボース(五炭糖)とリン酸、塩基から構成される核酸であり、塩基はプリン塩基であるアデニン(A)・グアニン(G)・ピリミジン塩基であるシトシン(C)・チミン(T)の4種類があります。DNAの塩基配列が遺伝情報として機能しますが、全ての塩基配列が遺伝情報となるわけではありません。
DNAには遺伝情報を持っている部分と持っていない部分があり、DNA=遺伝子という誤解が多いですが、細胞の中にある遺伝情報を保持している物質がDNAで、DNAの中に含まれている遺伝情報が遺伝子なのです。
二重鎖DNAでは、2本のポリヌクレオチド鎖が反平行に配向し、右巻きの螺旋形態の二重螺旋構造となっています。2本のポリヌクレオチド鎖は相補的な塩基(A/T、G/C)対の水素結合を介して結合しています。
DNAの相補的二本鎖構造の意義は、片方を保存用に残し、もう片方は遺伝情報を必要な分だけmRNA(メッセンジャーRNA)に伝達する転写用とに分けることであり、二本鎖の片方をそのまま受け継がせるため、正確なDNAの複製を容易に行うことができ、遺伝情報を伝えていく上で重要となっています。
では、DNAと心理学には、どのような関係があるのでしょうか。心理学では遺伝と環境という観点から、様々な仮説や理論が提唱されています。この「遺伝か環境か」という論争は遡れば古代ギリシアから始まっており、現在も心理学をはじめとする様々な学問領域で続いています。
心理学では遺伝・環境問題において、遺伝要因と環境要因のいずれか一方の機能を重視する孤立要因説と両要因の統合性を強調する輻輳説、両要因間の動的な相互関連性や自己調節性を重視する相互作用説という研究の歴史的な流れがあります。
遺伝と心理学の関係において、人間が環境への効率的な適応を成し遂げるために予め遺伝的に高度に組織化された行動様式や認知的体制を系統発生的に獲得していると仮定する考え方があります。このような考え方は動物行動学(エソロジー)や社会生物学の考え方を踏襲しています。そして言語生成のための普遍文法を想定するというチョムスキーの理論や認知的カテゴリーの生得的制約を扱うカイルの固定的な認知的モジュールから認知機能を説明するフォーダーの理論、新生児の知覚・認知能力の有能性(コンピテンス)を解明するバウアーの理論などがあります。
もう1つ、心理学における個人差研究において遺伝の問題が取り上げられることが多いです。心理的・行動的形質の表現型(知能指数・パーソナリティなど実際に発現された測定可能な特性)の個人差に遺伝子型(環境と相互作用しあって表現型を導きその特性を規定する一人一人の遺伝子構成)の個人差と環境の個人差が寄与している程度を行動遺伝学的なモデルによって明らかにしていくという考え方があります。
具体的には、双生児・親子・養子などの血縁関係の違いを遺伝子型の変数として、表現型の類似性との相関関係を手がかりにしながら、相加的遺伝、非相加的遺伝(遺伝子間交互作用)、共有環境(家族の成員を類似させるように働く環境)、非共有環境(同じ家族でも異ならせるように働く一人一人に固有な環境)などの効果を統計的に解析していきます。
たとえば知能指数は遺伝分散が50%程度と推定されており、そのほとんどは相加的遺伝分散であり、児童期までは共有環境の効果も大きいものの、老年に至るまで遺伝規定性も非共有環境の影響も増加することが判明しています。一方で、外向性や情緒的安定性などパーソナリティについては、非相加的遺伝効果も含む遺伝の影響が50%程度であり、残る環境の影響はほとんど非共有環境であることなどが示唆されています。
このように、心理学では伝統的に遺伝に関する研究が実施されており、現在も遺伝と環境の相互作用という観点から研究が進められています。
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