コラム

心理学分野における女性の活躍(1) 

2022.12.22

心理学の分野では、年々、女性の活躍が進んでいます。 

一般的に心理カウンセラーというと、なんとなくですが、女性をイメージする方が多いかもしれません。
実際に大学院の修士課程において、臨床心理士コースや公認心理師コースに在籍している学生は女性の方が多い傾向にあります。
また、こころ検定も1級・2級・3級・4級を通じて、女性の受検者の方が多い傾向にあります。
では、心理学の分野において、女性はどんな活躍をしてきたのでしょうか。
本コラムでは、著名な心理学者や 心理カウンセラーの中から、女性の先生方について紹介していきたいと思います。 

エリザベス・ロフタス

エリザベス・ロフタスはアメリカの認知心理学者です。
カリフォルニア州ロサンゼルスで生まれたロフタスは、1966年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校で数学と心理学の学士号を取得し、1967年にはスタンフォード大学で心理学の修士号、1970年に同大学で心理学の博士号を取得しています。 

 ロフタスは私たちの記憶がいかに曖昧なものなのかについて、認知心理学の観点から研究しています。
まず、意味記憶からの情報検索に関する研究に従事したロフタスは、記憶研究の立場から目撃者証言の信用性に関わる諸要因の解明に従事しました。
これは、事後情報効果とよばれるものです。ロフタスは被験者に短い映画を見せて、映画を見終わってから半数の被験者には「田舎の道を走って小屋を過ぎた時に、白いスポーツカーはどれほどの速度で走っていたか」という映画にはなかった小屋の情報を加えた質問をしました。
残りの半数は「止まれの標識を過ぎたとき、白いスポーツカーはどれほどの速度で走っていたか」という映画の内容と一致した質問をしました。
1週間後に「あなたは小屋を見たか」と質問されると、前者の質問を受けた被験者の17.3% が「はい」と回答したが、後者の質問を受けたグループではたった2.7% しか「はい」と回答しませんでした。 

 また、ロフタスとパーマーは、自動車事故に関する映画を被験者に見せた後に、「自動車が激突した時に、車はどれほどの速度で走っていましたか」といった質問を実施しました。
そして、この質問の変形として「激突した」という動詞を変化させて「衝突した」・「突き当たった」・「ぶつかった」・「接触した」などの言葉を使用した質問も実施されました。

結果は「激突した」という動詞で質問した被験者の速度の報告が最も速く、これらの衝突の程度を表現する言葉の違いによって、報告される速度に影響が現れることが示されました。
さらに別の実験では、割れたガラスがオリジナルの出来事にはなかったにもかかわらず「割れたガラスを見ましたか」との質問に対して「激突した」を使用した質問の方が「ぶつかった」を使用した質問より多く「はい」と回答する人が多いという結果となりました。 

 このように、ロフタスの研究は、私たちの記憶が現実世界のコピーではなく、積極的に現実世界からの情報を再構成した結果として産み出されるものであるということを明らかにしたのです。
私たちは、見ていない・聞いていない事柄についても、質問されると“思い出してしまう”という非常に困った認知の“クセ”を持っているのです。
また、質問の際の言葉に引きずられて、実際に起きた出来事を“脚色”してしまうこともあるのです。
そして、これらの問題は犯罪における目撃証言にも影響を及ぼすことが判明しています。 

マーガレット・マーラー

マーガレット・マーラーは1897年5月10日 生まれのオーストリアの精神科医・精神分析家・発達心理学者です。
マーラーは分離固体化理論を提唱したことで有名です。
分離固体化理論とは、5段階からなる乳幼児期からの母子関係に関するものです。
第1段階は正常な自閉期とよばれる生後1か月頃までであり、自分と母親の区別がつかない段階で、現実と幻想が未分化な時期であるとされています。
第2段階は共生期とよばれる生後1ヶ月から4~6ヶ月ころまでであり、母親という存在を少し意識できるようになる時期であるとされています。
第3段階は分化期とよばれる生後4~6ヶ月ころから10ヶ月ころまで、母親と自分の区別ができるようになり、探索行動が増える時期であるとされています。
第4段階は練習期とよばれる生後10ヶ月から16~18ヶ月ころまでであり、母親から離れる行動が増えるが、安全基地である母親の元に戻る行動が繰り返される時期であるとされています。
第5段階は再接近期とよばれる生後16~18ヶ月ころから24ヶ月ころまでであり、母親から離れる行動と同時に分離不安が強く生まれる時期であるとされています。 

マーラーは表3の3~5までの段階を分離個体化期とよび、この5段階が終了した段階を個体化確立期とよんだ。また、分離個体化の成功により、対象恒常性が達成されるとしています。 


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