コラム

心理学分野における女性の活躍(2) 

2022.12.29

心理学の分野では、年々、女性の活躍が進んでいます。 

 一般的に心理カウンセラーというと、なんとなくですが、女性をイメージする方が多いかもしれません。実際に大学院の修士課程において、臨床心理士コースや公認心理師コースに在籍している学生は女性の方が多い傾向にあります。
また、こころ検定も1級・2級・3級・4級を通じて、女性の受検者の方が多い傾向にあります。では、心理学の分野において、女性はどんな活躍をしてきたのでしょうか。本コラムでは、著名な心理学者や 心理カウンセラーの中から、女性の先生方について紹介していきたいと思います。 

原口鶴子 

原口鶴子は大正時代に活躍した日本の心理学者です。
原口は日本で初めて博士号(Ph. D.) を取得した日本人女性としても有名です。
群馬県出身の原口(旧姓:新井つる)は子どものころから非常に優秀であり、2年飛び級して高校に進学し、さらに1903年に日本女子大学・英文学科に入学します。
しかし、当時はまだ女性が大学で男性と同様の高等教育を受けることが難しかったため、師である心理学者の松本亦太郎の推薦もあり、1907年にアメリカのコロンビア大学に入学します。
そこで、原口は実験心理学を専攻し、ソーンダイクやキャッテルなどの名立たる心理学者たちから指導を受けています。 

コロンビア大学での研究活動が実を結び、原口は1912年6月5日に博士号の学位を取得しています。
その後、日本に帰国した原口は精力的に研究活動を続け、海外の論文や専門書の日本語訳や日本女子大学での講義などを実施しています。
また、日本女子大学に心理学実験室を設立する際にも貢献しています。 

アンナ・フロイト

心理学者・精神分析家であるアンナ・フロイトは、精神分析の創始者であるジグムント・フロイトの末娘で、正統フロイト派に属する専門家です。
父であるジグムント・フロイトがドイツのナチス政権に追われてロンドンに亡命した際、アンナも行動をともにし、以後イギリスを中心に活動をスタートさせます。
アンナは父の提唱した防衛機制論を発展させ、自我の健康な働きを強調して精神分析的自我心理学の基礎を作り出しました。
また、アンナの研究業績として大きいのは、何といっても精神分析を子どもに適用して遊戯療法を始めたということです。
しかし、児童分析のあり方をめぐって、メラニー・クラインと激しい論戦を繰り広げたこともありました。 

アンナ・フロイトが創始した遊戯療法とは、主に子どもを対象として、遊びを通じて行う心理療法です。
心理療法は通常、言語(音声言語によるコミュニケーション)を主たる媒介として実施しますが、子どもは大人と同じように言葉のやり取りで自分の気持を表現することがまだ十分にできません。
そこで、言語表現をあまり必要としない遊びを活用するわけです。
遊戯療法には、精神分析の理論である「遊びは子どもの内的な世界を表現するのに最も適した方法である」という考え方が背景にあることが関係しています。
現在では、遊びを単に「言葉の代わり」ではなく、言葉では表現し尽くせない深い感情や複雑な問題状況を表現することができると考えられており、遊びの表現のもつ意義が高く評価されています。
そのため、子どもだけではなく、成人に対しても実施されるケースが増えています。 

マーガレット・ミード

 マーガレット・ミードは子どもが文化を獲得していく社会化過程について、特に育児のやり方に着目して、フィールドワークによる研究を実施しました。
育児様式がパーソナリティをどのように規定していくかを課題とした文化とパーソナリティに関する研究が隆盛を迎える中で、ミードはその中核ともいえる存在となりました。
なかでも「男らしさ」と「女らしさ」は文化によって作り上げられるものであり、社会によって大きく異なっていて、普遍的なものでないという知見は、文化人類学だけに留まらず、社会・文化心理学などの関連領域を超え、社会学、政治学、法学などに衝撃を与え、現実の社会のあり方にも大きな影響を及ぼし続けており、特に文化心理学の分野において大きな功績となっています。 


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この記事を執筆・編集したのはこころ検定おもしろコラム編集部
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