未来の日と心理学には、どのような関係があるのでしょうか
【目次】
・まとめ
日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。5月5日は「未来の日」に制定されています。これは、新潟市でイベントの企画・運営などを手がける株式会社アール・イー(RE, Inc.)が制定したものです。制定のきっかけは5月5日の「こどもの日」に新しい意味を加えたいとの思いから、子どもを未来の象徴として捉え、未来を生き、主役となる子どもたちとともに未来を創る日とすることが目的としています。
では、未来や時間と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。
時間の概念は未来に加えて、現在・過去がありますが、これらの時間の概念について、心理学で研究が進められています。認知心理学における記憶に関する理論として、展望記憶というものがあります。展望記憶とは、今より先の時点において、何らかの行動を起こしたり計画を実行したりすることを覚えているという状態の記憶のことを指します。展望記憶は未来に関する記憶なので、別名、未来記憶ともよばれています。展望記憶に関する初期の研究として、心理学者のミーチャムとシンガーは指定した日に葉書を忘れずに投函するという課題を出された大学生の行動を研究しています。この課題において、葉書を投函することに対する動機づけの高い大学生は低い大学生よりも、多くのリハーサル(記憶を何度も繰り返し思い起こしたり、考えたりすること)を実施したり、外部的・補助的な記憶手段(手帳に書き留めておくなど)を利用して正確に実行していることが判明しています。また、心理学者のセシーらは、一定時間内に作業を仕上げなければならないという課題において、時計チェック(タイム・モニタリング)回数と時間の流れとの関係を研究しています。さらに、心理学者のリーズンは高度に熟練した行動をする際にみられる、いわゆる「うっかりミス」や「ぼんやりミス」(アクション・スリップ)を研究する中で、これらは展望記憶のモニター・ミスの1つであると述べています。これらの研究から、展望記憶は行動の実行と関係するものであり、その内容の新奇性・熟練度や時間知覚とも関係することが判明しています。
未来に実施しなければならない、または予め計画・予定していたことがあるにもかかわらず、それを「し忘れ」てしまうということは誰しもあるかと思います。この「し忘れ」を含む、失敗のことをスリップとよびます。前述したアクション・スリップ(うっかりミス・ぼんやりミス)もスリップに含まれるものとなっています。スリップとは、意図していない行為を行った時に生じる失敗現象全般のことを指します。ただし、本人に実行する能力がないために起こる失敗はスリップには含まれません。スリップは意図は正しいにもかかわらず、行動が上手くいかず失敗することを指し、意図そのものが間違っているミステイクとは区別されます。意図に向かうまでの計画の形成から行為の実行までの過程を考えることによって、スリップにいくつかの種類があるとされており、行動と計画の仕組を知る重要な手がかりであると考えられています。そして、このスリップに含まれるものとして、し忘れがあります。し忘れとは、ある行為を実行すべき時点で想起せずに実行しないことです。未来の予定に関する記憶である展望記憶に関するスリップの一種であり、実行すべき行為の内容は正確に覚えてはいるものの、実行のタイミングが間違っている場合も、し忘れに含まれます。し忘れの発生には実行すべき行為の重要度や実行時点で行っている他の行為が強力な習慣的行動かどうか、情動的要因などが関わっていると考えられています。
このように、未来や時間についても、心理学では様々な角度から研究が進められています。また、こころ検定4級の第2章でも、少しだけ時間と心理学の関係について概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。
この記事を執筆・編集したのはこころ検定おもしろコラム編集部 「おもしろコラム」は、心理学の能力を測る検定試験である「こころ検定」が運営するメディアです。心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、検定に興味がある、学んでみたい人のために、心理学を考えるうえで役立つ情報をお届けしています。