最近「若者の恋愛離れ」ということが話題になることがありますが、果たして、心理学的に「若者の恋愛離れ」という現象は本当に起きているのでしょうか?
「若者の恋愛離れ」に関する発達心理学的な複数の研究では、以下のようなことが判明しています。
これらの結果から“若者の恋愛離れ”という問題が、そこまで大きな社会問題ではないのではないかとも考えられます。
少なくとも、ニュースなどで大きく取り上げらえるようなものではないような気がします。
ここで一般論としての“若者の恋愛離れの増加”というテーマには1つの結論が出たわけですが、科学的な研究では「多いという印象でしたが、実際はそうでもありませんでした」というだけで終わりでは不十分なわけです。そこで、もっと掘り下げた検討が実施されています。
発達心理学者のエリクソンは青年期における重要な発達課題として、アイデンティティの確立を挙げています。
アイデンティティの確立とは「自分とは何か」・「これからどう生きていくのか」・「どんな職業についたらよいのか」などについて“自分なりの考え”を持っているということです。
また、成人初期の課題として、親密な他者との対人関係の構築が挙げられますが、いわゆる“若者”は青年期と成人初期の間の発達段階にあると考えることができます。
そして、エリクソンは、アイデンティティの確立が不十分な若者は、親密な対人関係に不安・恐怖を感じ、そういった関係性を回避しようとすると述べています。
若者の“恋愛離れ”と発達課題の関係を検証することが、この問題を考える際に重要であるのではないでしょうか。
しかし【恋愛に興味・関心がない】という若者の割合は判明したものの、【なぜ、興味・関心がないのか?】という問題は明らかになっていないわけです。
そこで、最近の研究において、全国の大学生1532名を対象とした、発達課題と恋愛に関する検証が実施されています。
まずは、この研究でも、若者全体に占める“恋愛離れ”の割合が検討されており、以下の通りになっています。
やはりここでも“恋愛離れ”の割合や20%程度ということであり、この結果は他の研究やアンケート調査とも一致しています。
そして、この“恋愛離れ”のカテゴリーに含まれる若者に「なぜ、恋人を欲しいと思っていないのか?」を自由記述で回答させた結果、各回答は以下のようなまとまりとなりました。
この結果から【恋愛に興味・関心がない】理由は5つに分類でき、特に多い理由は【自信のなさ】と【自然にできるだろう】というものでした。
また【恋愛離れ】のグループと【恋人がいる・いないけど欲しい】グループとを比較すると、エリクソンの発達課題における【恋愛離れ】のグループの方が基本的信頼感・自律性・主体性・勤勉性・親密性が低いものの、アイデンティティ達成については、差はないということが判明しています。
エリクソンの人格発達論によると、基本的信頼感は乳幼児前期、自律性は乳幼児後期、主体性は幼児期、勤勉性は児童期、アイデンティティ達成は青年期、親密性は成人初期の発達課題であるとされています。
つまり、青年期における発達課題であるアイデンティティ達成という部分以外が【恋愛に興味・関心のない大学生】において低い傾向にあり、それは青年期以前の過去の発達課題と、現在もしくは近未来の成人初期の発達課題であるということが判明したわけです。
このように、世間一般の興味・関心や流行などと実情との差を明確化するのも心理学研究の役割であると同時に、より深い考察を世間に伝えるのも心理学研究の果たすべき役割であるといえるでしょう。
この記事を執筆・編集したのはこころ検定おもしろコラム編集部
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