コラム

日本の有名な心理学者たち Part7

2020.4.16

心理学者やメンタルへルスの専門家には、日本人にも多くの有名な先生方がいらっしゃいます。そんな日本を代表する先生方の一部を御紹介させていただきたいと思います。

印東 太郎先生

印東先生は1923年、東京生まれの心理学者です。慶應義塾大学卒業後、1973年まで同大学の教授を務められています。そして、翌年の1974年からアメリカのハーバード大学に留学し、心理学の研究をさらに進められています。

1979年には、カリフォルニア大学アーバイン校で心理学の教授を務められています。印東先生が専門とされるのは数理心理学とよばれる分野です。
数理心理学とは、フェヒナーの精神物理学における対数法則、エビングハウスの忘却曲線、サーストンの学習曲線などのように、感覚・知覚・認知・学習など心理学の各領域における構造を数学的表現により理論化したものです。

また、情報処理のメカニズムや、意思決定理論は経済学の効用理論などについても研究対象としています。
データは実験の内容・目的によって連続量の場合も、離散量の場合もあり、こうして数量化されたデータを対数関数・指数関数・微分方程式・積分変換・行列代数・確率分布・確率過程などを用いて分析して理論を構成していきます。

印東先生は主要な学術雑誌に100以上の研究論文を発表しており、心理学的に視覚空間の幾何学的表現、色空間、意味記憶の確率的表現、能力試験を数理モデルで検討しています。

心理学は大学の文学部や教育学部の中にあるため、文系のイメージが強いかもしれません。
しかし、実際にはデータを統計分析することが多いため、数学の知識は必要不可欠なのです。
印東先生が専門とされている数理心理学は、特に数学的な要素を重視した心理学分野であり、より論理的・客観的な観点から心理的過程について検討しています。

内田 勇三郎先生

内田先生は1894年生まれの心理学者です。
また、兄は鳥類学者、従兄弟は魚類学者ということで、御家族・御親族にも科学者が多い家系でもあります。
内田先生は東京帝国大学(現在の東京大学)の心理学科を卒業された後、1921年に財団法人・協調会産業能率研究所で心理専門職としてキャリアをスタートさせています。

その後、1923年には東京府立松沢病院で嘱託として勤務しています。
これは、内田先生の専門領域が臨床心理学であったからです。
1925年には、東京を離れて、熊本の第五高等学校で講師を務められています。

1928年に東京に戻られた内田先生は、文部省・体育研究所や法政大学、早稲田大学に務められています。
1939年に早稲田大学を辞職後は日本・精神技術研究所を設立し、所長に就任されています。
また、1950年には東京高等獣医学校の教授も務められています。

内田先生の功績の中で最も有名なのが、クレペリン精神作業検査を発展させたことです。
内田先生はクレペリンの提唱した作業曲線のアイデアと、クレッチマーのパーソナリティ類型論を結びつけて新しいパーソナリティ理論を構築しました。

そして、その理論に基づいた内田 – クレペリン精神作業検査を開発しました。前述の本・精神技術研究所は、内田 – クレペリン精神作業検査の販売と実施・判定を業務として行う事業所として設立されたものでもあります。

内田 – クレペリン精神作業検査については、こころ検定1級(メンタルケア心理専門士)のテキストである精神医科学緒論の第4章で概観しているので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。

大村 政男先生

大村先生は1925年、東京生まれの心理学者です。
日本大学・法文学部・心理学科卒業後、同大学院修士課程修了されています。
1982年に「顕現性不安の構造に関する研究」で日本大学から文学博士号が授与されています。

その後、少年鑑別所の鑑別技官を務めた後、日本大学・文理学部の教授に就任され、1996年の定年まで勤められています。
最終的には日本大学の名誉教授にもなられています。多くの心理学研究に関する研究業績から、1995年 には、日本応用心理学会の名誉会員、2000年には日本心理学会の名誉会員にも選ばれています。

大村先生の研究業績として有名なのが、血液型と性格の関係性について、科学的に検証した点です。今でも、当たり前のように“血液型性格診断”というものが、まことしやかに語られていますが、大村先生はしっかりと科学的・論理的・客観的に研究を実施し、血液型とパーソナリティ(性格)の間には関連が認められないということを明らかにしています。

 

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この記事を執筆・編集したのはこころ検定おもしろコラム編集部
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