配置薬の日と心理学には、どのような関係があるのでしょうか
【目次】
・心理学・精神医学の治療・支援のアプローチ「薬物療法」について
・まとめ
日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。8月1日は「配置薬の日」に制定されています。これは「富山の薬売り」で知られる富山県富山市に事務局があり「おきぐすり」の発展・研究で保健衛生水準の向上を目指している一般社団法人・全国配置薬協会が制定したものです。日付の由来は「は(8)いち(1)」(配置)という語呂合わせからきています。「先用後利」という有用性・利便性・経済性に優れた「配置薬」をさらに多くの人に普及拡大することが目的となっています。
「おきぐすり」は薬事法での正式な名称は「配置販売業」というものになります。そして、おきぐすりの最大の特徴ともいうべき「先用後利」とは先に商品を使ってもらい、後で使った分だけ代金を受け取るという販売方法であり、その代表的な事例が「富山の薬売り」なのです。おきぐすりは常備薬の入った薬箱を無料で各家庭に配置して、薬商が年に一、二度、配置先の家庭を巡回して薬の使用状況を確認、補充を実施し、顧客は使用した薬の代金だけを支払うというものです。「富山の薬売り」は藩の保護・統制を受けて発展し、全国に広まっていきました。このような歴史を持つ配置薬は医薬の普及が十分ではなかった江戸時代から300年以上にわたりセルフメディケーションの先駆けとして、地域の人々の健康維持・増進を支えてきたものです。
では、薬剤と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。
心理学・精神医学の治療・支援のアプローチとして、薬物療法があります。薬物療法は薬物投与による治療法であり、外科療法・物理療法・心理療法などと同列に位置づけられるものとなっています。薬物療法では、薬剤の吸収・分布・代謝についての薬力学の知識に基づいて、年齢・性別・体重・合併症・併用薬剤・副作用の程度などを考慮して投与量や用法を決定していきます。精神医学の分野では1950年代以後から各種の向精神薬が開発されたことで、精神外科から切り替わる形で薬物療法が大きく発展していきました。
心理学・精神医学における薬剤に関する学問分野として、精神薬理学というものがあります。精神薬理学は人間の認知・感情・行動などに影響を及ぼす薬物の総称である向精神薬の薬理作用や臨床効果を研究する分野です。精神薬理学の研究は様々な精神疾患の治療薬の開発だけでなく、脳や神経、神経伝達物質のメカニズムの解明にも貢献しています。
もう1つ、心理学・精神医学の中の分野として、行動薬理学というものがあります。これは向精神作用をもつ薬物の研究開発とその作用機序および薬物を用いた脳機能の解析を目的とする学問領域です。行動薬理学の研究は薬効や安全性が未確認の薬物を直接、人間に投与することができないので、動物を対象とした動物実験を主体に実施されています。動物実験の際、行動観察からその結果を得る以外に方法がありません。なぜなら、動物は自身の体調や身体症状を言語で報告することができないからです。そこで「行動」というものに着目した行動薬理学といく分野が誕生・発達していきました。
私たちの皮膚の表面温度は皮膚温ともよばれ、様々な要因によって影響を受けます。外部環境要因として、湿度、気流、外部環境温などの影響を受けます。そのため、「ジメジメしている」という状態でも暑さや寒さを感じ、温度自体には変化がなくても、扇風機による「風」が気流となることで、涼しさを感じることができます。また、内部環境要因として、血液の温度、皮下脂肪層の厚さなどの皮膚構造、発汗なども影響を及ぼします。従って、太っている人は暑がりですし、汗をかいた後に汗が蒸発する際に熱が奪われることで、暑さが和らぐのです。
行動薬理学の歴史として、1950年代の初めにクロルプロマジンとレセルピンという抗精神病薬が統合失調症(当時の名称は精神分裂病)の改善効果のあることが研究の結果として判明したこと大きな一歩となっています。そして、同時並行して、この薬剤の作用機序に学習心理学(行動分析学)における条件づけのメカニズムがあることも判明しました。ここで、心理学(学習心理学・行動分析学)と薬理学が融合することで、現在の行動薬理学の基礎が確立されたのです。現在、行動薬理学では記憶学習課題を用いた認知症のメカニズムの解析などの分野にも発展しています。そして、行動観察という要素も行動薬理学には非常に重要な要素となっています。
このように、薬剤については心理学・精神医学の分野で様々な角度から研究が進められています。また、こころ検定2級の精神医科学基礎のテキスト内で向精神薬について概観していますので、興味・関心のある方は、是非、勉強してみていただければと思います。
この記事を執筆・編集したのはこころ検定おもしろコラム編集部 「おもしろコラム」は、心理学の能力を測る検定試験である「こころ検定」が運営するメディアです。心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、検定に興味がある、学んでみたい人のために、心理学を考えるうえで役立つ情報をお届けしています。