コラム

メンタルヘルスと神経伝達物質(2) 

2023.3.30

メンタルヘルスと関連の深い神経伝達物質が多く存在しており、私たちの心身の健康にかかわりがあります。 

 私たちの心身の健康には脳や神経が重要な役割を果たしています。
特に神経伝達物質やホルモンの濃度や分泌量は、私たちのメンタルヘルスにおいて非常に重要な役割を担っています。
では、具体的にどのような効果や影響を及ぼしているのでしょうか。今回のコラムでは、いくつかの神経伝達物質やホルモンについて解説していきたいと思います。 

オキシトシン

オキシトシンは脳の視床下部で生成され、下垂体から分泌されるホルモンです。
オキシトシンが身体に及ぼす影響としては、女性が赤ちゃんに授乳する際に乳腺の平滑筋を刺激したり、陣痛の際に子宮の平滑筋を刺激したりする効果があります。
メンタルヘルスに関して言えば、オキシトシンは他者との愛情や信頼感、幸福感などとの関連が強く、赤ちゃんと母親との関りなどからも「愛のホルモン」ともよばれています。 

コルチゾール(コルチゾル)

コルチゾール(コルチゾル)は 副腎皮質から分泌されるホルモンであり、身体との関係では、糖質の合成を促進したり、炎症の抑制をしたりするという効果があります。
また、人体の老化とも関連があることが判明しています。メンタルヘルスに関しては、ストレスによってコルチゾール(コルチゾル)の分泌量が増えることが判明しています。
そして、コルチゾール(コルチゾル)が大量に分泌されると脳の一部が委縮し、これが心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状と関連するのではないかと考えられています。
コルチゾール(コルチゾル)を血液や尿、唾液から抽出することができるため、専用の機器を使用することでストレスを数値化して測定・評価することができます。 

メラトニン

 メラトニンは私たちの生活リズムと関連の深いホルモンです。
メラトニンは脳の視床上部にある松果体から分泌されるホルモンです。
このメラトニンが概日リズム(サーカディアン・リズム)という約24時間の生体リズムをコントロールしています。
メラトニンの分泌は夜間に多くなり、昼間は減少するという特徴があります。より厳密にいえば、起床から約14 時間後にメラトニンの分泌が開始されます。
つまり、仮に朝 7 時に起床したとすると、夜の9時ころにメラトニンの分泌が開始され、それが「夜です、寝ましょう」という合図となって、徐々に睡眠・休息へと身体各 部位に生理的な変化を引き起こしています。
また、メラトニンの分泌は光を投射されると抑制されるという特徴があります。
これが、私たちが基本的には昼間は眠くならないということとも関連しています。
太陽や照明の光を浴びることでメラトニンの分泌が減少し、それが「朝です(昼です)、活発に稼働しましょう」という合図となって、覚醒・活動へと身体各部位に生理的な変化を引き起こしているのです。
昼は仕事、 夜は睡眠という生活を送っているにも関わらず、夜にあまり眠れず、逆に昼はボーっとしてしまうということがあります。
それは夜間に不必要な光刺激に曝されてメラトニンの分泌が抑制され、概日リズム(サーカディアン・リズム)に影響が出たということが原因の1つとして考えられます。
特に最近、スマホなどを寝ながら見ていたりすると、スマホの画面の照明の影響で、夜間にもかかわらずメラトニンの分泌が減少してしまうため、目が覚めてしまい、寝つきが悪くなり、不眠になってしまうという報告が増えています。
全く逆のものとして、最近、流行の兆しがある「シエスタ」などの昼頃の短期睡眠の場合は、メラトニンの分泌をしっかり抑えることで、昼寝からの寝起きをすっきりとさせて、その後の仕事や勉強を効率良く進めることができます。
この際、前述の寝る前のスマホと逆で、昼寝から起きてすぐに強めの照明の光を浴びることで、メラトニンの分泌を抑制し、すっきりと目覚めることができます。 

いかがだったでしょうか。このように神経伝達物質・ホルモンは様々な形で私たちの心身の健康を支えているのです。
神経伝達物質・ホルモンに興味・関心のある方は、こころ検定4級の第3章で概観していますので、勉強してみていただければと思います。 


著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはこころ検定おもしろコラム編集部
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