春の全国交通安全運動の日と心理学の関係

春の全国交通安全運動の日と心理学には、どのような関係があるのでしょうか

【目次】

・4月6日から4月15日は「春の全国交通安全運動の日（週間）」

・交通心理学とは

・まとめ

4月6日から4月15日は「春の全国交通安全運動の日（週間）」

日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。４月６日から４月１５日は春の全国交通安全運動の日（週間）に制定されています。これは、1948年からスタートしており、国家地方警察本部長官通達に基づくものとなっています。春の全国交通安全運動は自動車普及に伴う交通事故の急増を受けて、1962年からは政府の重要施策として交通対策本部が中心となり、交通事故撲滅のために「秋の全国交通安全運動」（9月21日～30日）と合わせて、毎年、実施されています。この日（週間）は、広く国民に交通安全思想の普及・浸透を図り、交通ルールの遵守と正しい交通マナーの実践を習慣付けるとともに、国民自身による道路交通環境の改善に向けた取組を推進することにより、交通事故防止の徹底を図ることを目的としています。また、期間中の4月10日を「交通事故死ゼロを目指す日」に制定しており、特に力を入れた活動をしています。

では、交通安全運動と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。

交通心理学とは

心理学の応用分野に交通心理学というものがあります。交通心理学とは、交通場面における人間行動（運転者・歩行者・自転車乗用者の交通行動）を科学的に解明し、交通事故の防止に寄与することを目的とする分野です。交通心理学の特徴として、実際の行動場面における人間の様々な行動を研究対象として人間理解を深め、事故防止という観点から社会に貢献するという点が挙げられます。交通心理学の研究分野は以下の４つに大別することができます。

（１）運転時の人間の情報獲得・処理特性の研究 運転時の情報獲得・処理特性：運転時に利用する情報の80～90％は視覚情報であるとされています。そこで、交通心理学では視力と事故、違反の発生率との関係について多くの研究が実施されています。また、情報獲得と注視移動方法には有効視野の広さが重要となることも判明しています。運転時の有効視野の広さは約20°から10°に変化するものの、走行速度そのものではなく運転場面の混雑度によって狭くなるとされています。このことは実際の事故発生率が混雑した交差点で顕著であることと関係しています。運転時の走行速度については、一般に高速の過小評価および低速の過大評価が行われるとされています。接近車両に対する速度感についても、低速の過大評価と高速の過小評価が行われるとされています。また、運転者自らの走行速度については、減速時・長時間走行時・景観が開けている場合・聴覚による手がかりが減少した場合に過小評価が行われるとされています。

（２）交通事故発生と運転適性の関係の解明 交通事故多発者は単純反応時間に対する選択反応時間の増加率が高く判断速度に問題のあること、動作時間は早いが知覚時間が遅いことが研究報告として提示されています。年齢と事故発生率については、25歳以下の若年者で顕著に高いものの、55歳以上の高年齢者でも高いことが報告されています。また、事故反復者（何度も事故を起こす人）の存在については、その根拠について議論がなされているものの、存在を否定することはできないであろうとされています。事故反復者に関する多くの研究から、その特性として情緒的不安定性の高さ、自己コントロールの弱さ、焦燥反応性の強さ、社会的適応性の低さが一致して報告されています。

（３）交通行動の文化的背景の解明 欧米諸国と日本を比較した研究では、優先権に対する意識や道路空間の利用規範意識が日本の方が低いことが報告されています。また、日本の方が赤信号からの発進タイミングが早い、都市部における歩行速度の早いことが特徴として報告されています。

（４）交通安全教育方法の研究と普及 交通安全教育として、態度変容をもたらす安全教育の実施の仕方、幼少時から老年期にわたる一貫した交通安全教育の必要性が主張され、様々な形で研究が実施されています。なお、交通行動とは単なる知覚運動技能として捉えるのではなく、対人行動あるいは社会的行動という観点から取り組むことの重要性が主張する研究が多いことも特徴的です。

まとめ

このように、心理学では、交通安全や交通事故防止、交通教育などについても、様々な角度から研究が実施されているのです。

著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはこころ検定おもしろコラム編集部 「おもしろコラム」は、心理学の能力を測る検定試験である「こころ検定」が運営するメディアです。心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、検定に興味がある、学んでみたい人のために、心理学を考えるうえで役立つ情報をお届けしています。