育休を考える日と心理学には、どのような関係があるのでしょうか
【目次】
・まとめ
日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。9月19日は「育休を考える日」に制定されています。これは積水ハウス株式会社が制定したものであり、日付の由来は「いく(19)きゅう(9)」の語呂合わせからきています。この日はより多くの人に男性の育休について考えるきっかけにしてもらうことが目的となっています。積水ハウスでは「イクメンフォーラム」を開催し、男性の育休実態などの調査について発信しています。また、同社では男性社員1ヵ月以上の育児休業の完全取得を目指し、男性の育児休暇について積極的に取り組んでいます。そして、2018年9月より運用を開始した「イクメン休業制度」で対象となる全ての男性社員253人が、1ヵ月以上の育児休業を100%取得するという実績を達成しています。この「イクメン休業制度」は3歳未満の子どもを持つ全ての男性社員を対象に3歳に達する日の前日までに1ヵ月以上の育児休業の取得を推進しています。
では、育休と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。
育休とは育児休業の略であり、子どもを養育する労働者が法律に基づいて取得できる休業のことを指します。これは、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約における第11条において、育児休業の取得による解雇と差別を禁止しているということからも、基本的には女性の労働者に関するものとなっています。本項目では、日本では1991年に育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児介護休業法)によって定められています。
この法律でも規定されている通り、日本では育児は母親が中心的に担うものというジェンダー役割が強いという傾向があります。そのため、前述の積水ハウスのように男性が育休を取ろうとすると同調圧力や役割期待、スティグマなどの影響により、男性の育休取得率は依然として低水準にとどまっています。その結果、厚生労働省の統計データによると、日本における育休の取得率(2022年)は女性が約85.1%であるのに対して、男性は約17.1%となっています。それでも、男性の育休取得率は徐々に上昇傾向にあるものの、取得日数の中央値は5日未満となっており、1週間に満たないという短い期間に留まっています。なお、育休取得意向のある男性は多い約60〜70%であるものの、実際に取得するのはそのうちの2〜3割(結果として、約17・1%程度)ということで、意向と実行の間に大きなズレが生じています。
では、男性が育休を取得することには、どのようなポジティブな要素があるのでしょうか。社会心理学と産業・組織心理学の観点から、育休とワーク・ライフ・バランスに関する研究が実施されています。研究の結果、育休取得が本人および家族の主観的幸福感(ウェル・ビーイグ)にポジティブな影響を及ぼすことが判明しています。また、父親の育休取得によって、母親の育児ストレスが軽減され、夫婦の絆が深まり、家族内のコミュニケーションが円滑になることも判明しています。さらには、育休取得経験のある人ほど、職場への満足度やワーク・エンゲージメントが高い傾向があることも判明しています。
また、職場の雰囲気や社風という観点も育休について考える上で非常に重要となります。前述のように、育休を取得することにどれだけポジティブな要素があったとしても、実際に育休を取得するためには職場環境や管理職(上司)の態度が及ぼす影響が強いものです。たとえば、誰も育休を取っていない職場では、取得への心理的ハードルが高く、取得は難しいでしょう。一方で、管理職(上司)の明確なサポートや制度活用の推進があれば、取得率は増加すると考えられます。また、管理職(上司)自身が育休取得経験者であれば、取得のハードルも下がり、育休に関する相談もしやすい環境を構築できると考えられます。ただし、現状では「育休=休み」と捉える風潮が根強く、仕事からの離脱というマイナスな認識がどうしてもぬぐえないという事実があります。
このように心理学では育休についても、様々な観点から研究が実施されているのです。
この記事を執筆・編集したのはこころ検定おもしろコラム編集部 「おもしろコラム」は、心理学の能力を測る検定試験である「こころ検定」が運営するメディアです。心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、検定に興味がある、学んでみたい人のために、心理学を考えるうえで役立つ情報をお届けしています。