読書と心理学には、どのような関係があるのでしょうか
【目次】
・まとめ
日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。10月27日は「読書の日」、そして、10月27日から11月9日までを「読書週間」に制定されています。「読書の日」については制定した団体や目的については定かではない部分も多いとされています。読書週間は1924年に図書館の利用PRを目的に日本図書館協会が制定した「図書館週間」(11月17日~23日)を母体としています。
その後、1933年に東京書籍商組合主催の「図書祭」(11月17日~23日)に改称されたましたが、戦争の影響で1939年には一旦廃止され、終戦後の1947年からは「読書週間」(11月17日~23日)に改称されました。この読書週間の目的は、読書の力によって、平和な文化国家を作ろうというものです。そして、1948年の第2回「読書週間」から、11月3日の「文化の日」の前後にまたがる現在の10月27日~11月9日の二週間に期間が延長されました。
では、読書と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。
私たちが文章を読むうえで重要となるのがワーキング・メモリーとよばれる能力です。ワーキング・メモリーは短期記憶の概念を発展させたもので、会話・読書・計算・推理など種々の認知機能の遂行中に情報がいかに操作され変換されるかといった情報の処理機能を重視するものとなっています。ワーキング・メモリーは言語的情報の処理のための音声ループと、視覚的・空間的情報の処理のための視空間スケッチパッドおよび、これら2つの下位システムを制御する中央制御部から構成されます。このうち、視空間スケッチパッドは内なる目に相当するものであり、目で見た文章などの情報を記憶し、処理していく能力となります。従って、読書には、この視空間スケッチパッドが関係していると考えられます。
また、一般的に「読む」ということについては、速読が注目されることが多いのではないでしょうか。通常、大人の読書速度は漢字仮名混じり文で1分間に400字から800字といわれています。速読といった場合、1分間に1万字以上の読解を指すことが多いとされています。内容についての概略の印象を得る、あるいは特定の事項を探し出すための読み方を走り読みともよびます。通常、集中力の増大、視点移動の敏速化、視幅拡大によって読字速度が増すといわれています。ただし、単に「読む」といっても内容の十分な理解を伴わなければ意味がなく、理解の深さの程度や読解素材の難易度によって、読解速度に変動が生じることが判明しています。教育心理学の領域では、児童の読書力を養成することを目的とする読書教授法の一環として、かなり昔から研究されてきています。従って、近年のようにビジネス場面での速読術が流行る以前から、学術的に速読が研究されていたということになるでしょう。
単語や文章を読む能力は認知機能の発達と関連しています。そこで、読みの能力を測定・評価する検査として、読書レディネス・テストがあります。このテストは読書開始(話し言葉から書き言葉への移行)のための認知発達の準備状態を測るテストです。また、読書開始の準備指導、読書開始期における読書困難児の診断や支援に用いることもできます。テスト内容には、読書開始を支える能力である、①お話を聞く(記憶、構成課題)、②絵本を読む(絵の指示、事物の理解課題)、③文字を理解する(絵と文字の結合課題)などが含まれます。読書レディネス・テストは、主に小学校入学前後の幼児、児童に対して実施されます。また、それ以降の児童に対しては、別の検査である読書能力テストがあります。
単語や文章を読むという能力に問題がある場合、それが疾患であることもあります。視覚や聴覚の障害、運動機能の障害などが認められず、全般的な知的発達にも遅れがないにもかかわらず、文字を読む際に文字や行の読み飛ばし、形の類似している他の文字への読み誤りが生じ、その結果、学習活動や日常生活において著しい困難を生じている障害を読書困難とよびます。聞く・話す・書く・読む・計算するといった特定の能力の1つあるいは複数に障害がみられる場合は限局性学習症と診断されることがあります。特に読字に関する障害のみが認められる場合、それは限局性学習症の病型分類として、より限定された能力に関する障害ということになります。また、視覚は健常だが後天的脳病変により読字あるいは書字言語の理解が障害された状態のことを失読とよびます。
このように、何かを「読む」ということは心理学的に様々な側面から研究が実施されています。
この記事を執筆・編集したのはこころ検定おもしろコラム編集部 「おもしろコラム」は、心理学の能力を測る検定試験である「こころ検定」が運営するメディアです。心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、検定に興味がある、学んでみたい人のために、心理学を考えるうえで役立つ情報をお届けしています。