更生保護の日と心理学には、どのような関係があるのでしょうか
【目次】
・まとめ
日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。7月1日は「更生保護の日」に制定されています。これは1962年に法務省が制定したものです。きっかけは、1949年7月1日に犯罪者予防更生法が施行されたことが由来となっています。そして、7月1日~7月31日は犯罪の防止と罪を犯した人たちの更生について理解を深め、犯罪のない明るい社会の実現を図ろうと「社会を明るくする運動」が1951年から実施されています。また、11月27日は更生保護記念日にも制定されています。
では、更生と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。
そもそも、更生とは何か悪い事、具体的には法に触れるようなことをしてしまった人に対する矯正です。従って、まず非行や犯罪などの問題があり、それに対応する処置が更生であるということになります。心理学では更生に関連する様々な理論や概念が存在しています。 更生の対象となる問題行動として虞犯行為があります。虞犯行為とは保護者の正当な監督に服しない性癖がある、正当な理由がなく家庭に寄りつかない、自己または他人の徳性を害する行為をする性癖があるといった行為の総称であり、少年法によって規定されています。具体的には家出・薬物乱用・飲酒喫煙・暴行・不純異性交遊などです。
さらに、防犯カメラとも関連する事柄として、犯罪の目撃証言の問題があります。代表的なものの1つに、事後情報効果とよばれるものがあります。これは、何らかの事件を目撃した後でニュースや第三者や捜査機関の人物から情報を見たり聞いたりすることで、その情報のためにオリジナルの記憶が変形したり、再構成されたり、失われたりするという現象です。もう1つ、代表的な目撃証言に関する問題として、凶器注目効果とよばれるものがあります。これは目撃者が武器をもった犯人を何らかの状況で目撃した場合、目撃者はその犯人の顔よりも凶器の方に注目し、犯人の顔に関する知覚や記憶が成立しにくくなるという現象です。
虞犯行為とは別に少年少女が関わるもので更生の対象となるものとして、触法行為があります。触法行為とは14歳未満の児童の刑罰法令に触れる行為のことを指します。14歳以上の者が行えば犯罪となる行為ですが、14歳未満の者には刑事責任を問えないので触法行為として区別しています。内容は窃盗がそのほとんどを占めるとされていますが、恐喝・暴行・傷害・強盗・強姦・殺人などもみられます。触法少年は児童相談所が取り扱い、養護施設や児童自立支援施設等への入所措置や児童福祉司による指導等の処遇を決定します。また、児童相談所から家庭裁判所へ送致される場合もあります。
そして、虞犯行為や触法行為を犯してしまった少年・少女に対しては、非行診断を実施することがあります。これは、非行に至る原因などを解明し、少年の立ち直りのための処遇方法を見出すことを目的とした診断・鑑別のことを指します。日本の司法制度には少年鑑別所というものがあります。少年鑑別所は家庭裁判所の観護措置決定によって少年を収容し、心身の鑑別を行う施設です。鑑別は少年の素質・経歴・環境およびパーソナリティ、それらの相互の関係を明らかにし、少年の矯正に関して最良の方針を立てる目的をもって行わなければならないとされています。具体的には、医学的な診査、少年との面接、行動観察、心理検査などの方法によって多角的な鑑別を実施し、判定会議を経て少年の処遇の指針が導き出されます。鑑別の結果は家庭裁判所の審判だけでなく、審判後の処遇にも活用されています。また、成人の受刑者の場合には刑務所において分類調査が実施され、その結果に基づいて処遇方針が立てられます。
少年鑑別所における更生や鑑別、処遇と関連するものとして家庭裁判所があります。家庭裁判所は家庭に関する問題と少年に関する事件を専門に扱う裁判所として1949年に設立されています。離婚や子どもの監護に関する問題、遺産分割等の家事事件、非行のある少年を扱う少年事件等を取り扱います。また、家事審判法と少年法に基づき、家庭の平和と少年の健全育成を図ることを目的としており、裁判とは異なる審判や調停という手続で問題解決を図っています。さらに、心理学等の知識を活用する家裁調査官を配置し、教育的・福祉的機能を有しています。
そして、より具体的な更生として保護観察があります。保護観察は非行少年や犯罪者に社会生活を続けさせながら改善・更生を図る社会内処遇制度です。保護観察には家庭裁判所で保護観察決定を受けた少年や保護観察つき執行猶予の成人に対するプロベーションと、少年院や刑務所を仮退院または仮出所した人に対するパロールとがあり、いずれも一定期間、更生のための監督・指導を実施するものです。保護観察は法務省所管の保護観察所の保護観察官が担当しますが、実際には観察官の指導のもとに民間の保護司が当たることがほとんどです。
このように、心理学では非行や更生についても研究や実践が実施されているのです。
この記事を執筆・編集したのはこころ検定おもしろコラム編集部 「おもしろコラム」は、心理学の能力を測る検定試験である「こころ検定」が運営するメディアです。心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、検定に興味がある、学んでみたい人のために、心理学を考えるうえで役立つ情報をお届けしています。