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音と心理学の関係

2024.12.6
  • 認知心理学
  • 心理学

音と心理学には、どのような関係があるのでしょうか

【目次】

12月6日は「音の日」

音と知覚心理学や生理心理学との関係

時間説と場所説の仮説とは

まとめ

 

12月6日は「音の日」

日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。12月6日は「音の日」に制定されています。これは、一般社団法人・日本オーディオ協会(Japan Audio Society:JAS)が1994年に制定したものです。1877年の12月6日にアメリカの発明家であるトーマス・エジソンが蓄音機を発明し「メリーさんの羊」の音を録音・再生することに成功しました。そのため、12月6日が音の日に制定されているわけです。そして、この日はオーディオの誕生した日でもあります。

音の日である12月6日は音楽文化・産業の更なる発展を図り、音について考える日とすることを目的として、記念行事が開催されたり、「音の匠」顕彰、「日本プロ音楽録音賞」授賞式、「記念コンファレンス」や「音の日の集い」が実施されています。

では、音と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。

 

音と知覚心理学や生理心理学との関係

音については、脳や神経が関係しているため、知覚心理学や生理心理学で研究が実施されています。また、解剖生理学においても、耳の基本的な機能が研究されています。耳は大きく分けて外耳・中耳・内耳の3つの部分で構成されていて、聴覚に関しては、外界の音が刺激となり、空気の振動として外耳の中の外耳道を通り、中耳にある鼓膜を振動させることで「音」として成立・知覚されています。そして、その振動が鼓膜の奥にある鼓室内の耳小骨に伝えられる。耳小骨まで伝わった振動は、内耳にある蝸牛の中のリンパ液を振動させます。蝸牛の中には有毛細胞という感覚細胞が存在し、この有毛細胞から音の振動が神経線維に伝えられ、そこから脳へと情報が伝えられます。基本的には脳の側頭葉という部分で聴覚情報の処理が実施されています。また、言葉に関する能力(言語能力)は左脳の方が得意であることが分かっており、音声の情報を理解するのは左脳の役割が大きいとされています。逆に右脳の方は歌を歌ったり、楽器を演奏する能力(音楽的能力)、感情を司る能力が得意であるとされており、音を奏でたり発したりするのは右脳の役割が大きいとされています。

 

時間説と場所説の仮説とは

聴覚に関しては、時間説と場所説という2つの代表的な仮説があります。時間説は、耳の蝸牛にある基底膜全体が振動し、その振動が脳に伝達された時点で音の高さが感じ取れるというものです。たとえば、100ヘルツの音は基底膜を毎秒100回振動させ、それが聴覚神経の神経線維を毎秒100回反応させ、それが脳で音として知覚されるということになります。これに対して、場所説は基底膜の段階で既に音の高さが識別されるというものです。基底膜は音の高さによって反応する部分(場所)が異なります。つまり、基底膜のどの部分(場所)が反応するかで、音の高さの違いが分かるということになります。最新の研究の結果、時間説と場所説は対立する仮説ではないということが判明しています。最新研究の結果から、時間説は低周波の音を知覚するメカニズムであり、場所説は高周波の音を知覚するメカニズムであると考えられています。

 

まとめ

人間は目・耳・鼻・舌・皮膚によって、外界の状況を把握しています。これは日常生活のあらゆる出来事を五感で知覚しているといっても過言ではありません。楽しい・悲しいなどの感情も、何らかの出来事を経験したことによってはじめて発生します。たとえば、仕事でお客様からクレームを受けているところをイメージしてみてください。この際、怒っているお客様の怒声を聴覚的に捉えることになります。その結果、聴覚情報が脳で認知的に処理され「自分にとって都合の悪い状況である」という判断が下されます。そして、悲しみなどのネガティブな感情が発生することになります。つまり、人間の心理は知覚からはじまるという意味で、非常に重要な要素であると考えられています。しかし、知覚(出来事)の部分はコントロールするのが困難なため、心理カウンセリング・心理療法では、認知・感情・行動の部分にアプローチすることが多いです。ただし、音楽療法のように音に特化した心理療法も存在し、音というアプローチで治療・支援を実施することもあります。


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この記事を執筆・編集したのはこころ検定おもしろコラム編集部 「おもしろコラム」は、心理学の能力を測る検定試験である「こころ検定」が運営するメディアです。心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、検定に興味がある、学んでみたい人のために、心理学を考えるうえで役立つ情報をお届けしています。