コラム

スマホの心理学

2022.4.21

スマートフォンは既に私たちの生活になくてはならないものになっていますが、心理学的に、スマートフォンには、どのような要素があるのでしょうか

スマホ依存の“依存”という言葉には聞き覚えがあるという方も多いのではないでしょうか。
スマホ依存には様々な問題がありますが、その1つとして挙げられるのが、テクノストレスという問題です。

【テクノストレスとは】

一般的にテクノストレスとは、コンピュータによる仕事・作業に従事している人が抱えるストレスを指します。
テクノストレスは、心身の障害が多発することから「人間とコンピュータとの微妙な関係が崩れた時に起こる病気」として定義されています。
主な症状としては、不安・抑うつなどのメンタル不調、身体各所の痛みや、いわゆる自律神経失調症のような症状などです。

コンピュータとスマートフォンでは、大きさや用途が異なりますが、スマホ依存による症状として、やはり目や肩の痛みや、自律神経失調症、不眠などの問題が同様に認められます。
コンピュータよりもスマートフォンの方がより深刻なのは、手軽に持ち運べて、多機能であり、いつでも・どこでも・何でもできてしまうため、依存の背景にある長時間利用や利用シチュエーションを拡大してしまうことにあります。 

【不眠症状】

スマホ依存の問題で最もよく耳にするのは不眠に関する問題です。
これは交感神経の活性化(興奮)による自律神経の異常という観点から説明することができます。

スマートフォンの画面を見ることで、目から光刺激が視神経を通じて、脳に送られます。
私たちの脳は目からの刺激を知覚することで、外界の変化に瞬時に対応することができます。
逆に目をつぶって何も見ていない状態では、視覚的に外界に変化が起きていないという認識になるので、交感神経は活性化しません。

私たちが夜、ぐっすりと眠れるのは、部屋を暗くして目をつぶることで光刺激を遮断し、交感神経を抑制し、逆に副交感神経を活性化することで、リラックスすることができるからです。

しかし、スマートフォンの画面を見ることで、目から光刺激が供給され続け、交感神経が活性化されて眠れなくなってしまいます。
さらに、悪循環として、スマートフォンの画面を見る⇒目が冴える⇒眠れない⇒眠れないからスマートフォンを操作する⇒より目が冴えて眠れなくなる⇒気づくと朝になってしまっている、というような問題の連鎖が起こり、影響が拡大・深刻化することもあります。 

【情報処理が追い付かない】

スマホ依存の問題の中で意外に分かりにくいですが、かなり深刻な問題を引き起こしているのが情報過多による悪影響です。
スマートフォンは大量の情報に気軽にアクセスできるツールです。

しかし、その情報量はとても1人の人間が適切に処理して活用できるレベルのものではありません。
インターネットを利用したり、アプリでゲームをしている際に「今、私は大量の情報を処理しているんだ」と思いながらスマートフォンを操作している人はいないと思います。

しかし、実際には目や耳から大量の情報がスマートフォンを通じて流入してきており、どうでもいい情報やちらっと眼に入っただけの情報も「どうでもいいか、どうでもよくないか」や「無視するか、無視しないか」という根本的なレベルで情報を処理しているのです。

この情報処理は脳と神経を活性化させます。
従って、前述のスマホ不眠の問題も、目からの光刺激の問題と同時に、画面に映った何らかの情報を処理することによる交感神経の活性化という問題も含んでいるのです。
どうでもいい情報も無視すればいい情報も全て処理してしまうため、スマホ依存の状態になると常に交感神経が活性化し、毎日、強い疲労感に見舞われるという生活になってしまいます。 

スマートフォンは私たちの生活にとってなくてはならないものであり、既に利用している人にとって「使用をやめる」「解約する」というのは、非現実的であると考えられます。
これは、お酒やタバコ、ギャンブルと同じで、問題の無い範囲での利用や日常生活に支障をきたさない範囲での使用であれば、問題が無いというのと同じです。
なくてはならないものだからこそ、スマホに振り回される生活ではなく、上手く使いこなすことが、心身の健康のためにも重要であると考えられます。 

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この記事を執筆・編集したのはこころ検定おもしろコラム編集部
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