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日光と心理学の関係

2024.5.10
  • メンタル
  • 心理学

<2023年10月19日 こころ検定-心理学で役立ちコラム-の再掲>

太陽の光と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。

日本には365日の全てに何らかの「記念日」が制定されています。 7月26日は「日光の日」に制定されています。そのきっかけは、820年に弘法大師が日光山を命名したことまでさかのぼります。 日光山はそれまで二荒山(ふたらさん)とよばれていましたが、二荒山に登った弘法大師がその景色に感動する中で「二荒」(ふたら)を「二荒」「にこう」と音読みして「日光山」(にっこうさん)と命名したという伝承があります。

【目次】

日光と関連の深い物質

メラトニンの特徴

光療法について

まとめ

日光と関連の深い物質

さて、そんな真夏の真っ盛りの日が記念日となっている日光ですが、心理学において日光は重要な研究対象となっています。 生理心理学では神経伝達物質が人間の身体と心に及ぼす影響について検討されています。その中でもメラトニンは日光と関連の深い物質であることが判明しています。

メラトニンは私たちの生活リズムと関連の深いホルモンです。 メラトニンは脳の視床上部にある松果体から分泌されるホルモンです。 このメラトニンが概日リズム(サーカディアン・リズム)という約24時間の生体リズムをコントロールしています。

メラトニンの分泌は夜間に多くなり、昼間は減少するという特徴があります。 より厳密にいえば、起床から約14 時間後にメラトニンの分泌が開始されます。 つまり、仮に朝 7 時に起床したとすると、夜の9時ころにメラトニンの分泌が開始され、それが「夜です、寝ましょう」という合図となって、徐々に睡眠・休息へと身体各 部位に生理的な変化を引き起こしています。

 

メラトニンの特徴

また、メラトニンの分泌は日光をはじめとする光を投射されると抑制されるという特徴があります。 これが、私たちが基本的には昼間は眠くならないということとも関連しています。 日光や照明の光を浴びることでメラトニンの分泌が減少し、それが「朝です(昼です)、活発に稼働しましょう」という合図となって、覚醒・活動へと身体各部位に生理的な変化を引き起こしているのです。

昼は仕事、 夜は睡眠という生活を送っているにも関わらず、夜にあまり眠れず、逆に昼はボーっとしてしまうということがあります。 それは夜間に不必要な光刺激に曝されてメラトニンの分泌が抑制され、概日リズム(サーカディアン・リズム)に影響が出たということが原因の1つとして考えられます。

特に最近、スマホなどを寝ながら見ていたりすると、スマホの画面の照明の影響で、夜間にもかかわらずメラトニンの分泌が減少してしまうため、目が覚めてしまい、寝つきが悪くなり、不眠になってしまうという報告が増えています。 全く逆のものとして、最近、流行の兆しがある「シエスタ」などの昼頃の短期睡眠の場合は、メラトニンの分泌をしっかり抑えることで、昼寝からの寝起きをすっきりとさせて、その後の仕事や勉強を効率良く進めることができます。 この際、前述の寝る前のスマホと逆で、昼寝から起きてすぐに強めの照明の光を浴びることで、メラトニンの分泌を抑制し、すっきりと目覚めることができます。

  このように日光は「朝・活動・交感神経活性化」などの重要な合図となっており、さらには昼寝からすっきり目を覚ますためのきっかけともなっているのです。 つまり、日光は健康的な睡眠にとっても重要な要素なのです。  日光がメンタルヘルスにとって重要なのは前述の通りですが、心理カウンセリング・心理療法にも「光」が利用されています。 こちらは日光ではなく人工的な光ですが、光療法あるいは高照度光療法として、精神疾患の治療・支援に活用されています。

 

光療法について

光療法(高照度光療法)は季節性のうつ病に関する治療・支援のために開発されました。 うつ病の中には、季節の影響が非常に強く認められるものがあります。 特に冬季に日照時間が減少することと、抑うつ状態との間に強い関連が認められることが判明しています。

研究によると、全世界の人口の約20%が季節の変化によってメンタルヘルスに変調をきたすことがあるとされています。 さらには、重度の季節性うつ病のクライエントの場合、夏至の日を境に日照時間が減少するにつれて、全く同じペースで抑うつ状態が悪化するケースもあるということが報告されています。

光療法(高照度光療法)は強い光を人工的に作り出し、それを浴びることで抑うつ状態を改善することができます。また、メラトニンの分泌を正常に戻すことができるため、睡眠障害の治療・支援にも活用されています。

 

まとめ

このように、日光は季節の移り変わりを示すものであると同時に、応用することで精神疾患・メンタルヘルスの治療・支援にも活用することができるのです。


著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはこころ検定おもしろコラム編集部 「おもしろコラム」は、心理学の能力を測る検定試験である「こころ検定」が運営するメディアです。心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、検定に興味がある、学んでみたい人のために、心理学を考えるうえで役立つ情報をお届けしています。