天地の日と心理学には、どのような関係があるのでしょうか
【目次】
・コンピュータ・サイエンスに関する研究で人工知能への貢献したハーバート・サイモン
・まとめ
日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。2月19日は「天地の日」に制定されています。これは、ポーランドの天文学者であり、地動説を提唱したニコラウス・コペルニクスの誕生日が由来となっています。コペルニクスが生きていた当時、主流だった地球中心説(天動説)を覆す太陽中心説(地動説)は、天文学史上最も重要な発見とされています。また、コペルニクスは、経済学においても貨幣の額面価値と実質価値の間に乖離が生じた場合、実質価値の低い貨幣のほうが流通し、価値の高い方の貨幣は退蔵され流通しなくなることを最初に発見した人物としても知られています。これは「悪貨は良貨を駆逐する」という慣用句にもなり、経済学の用語としてはグレシャムの法則と命名されています。コペルニクスは天文学以外の分野でも多才な人物であり、司祭・知事・長官・法学者・占星術師・医者としても活躍しています。コペルニクスは日々、聖職者・医師として多忙な生活を送りながら、時間を見つけては天体観測を実施し、その中で地動説を提唱したのです。
では、心理学の分野にも、コペルニクスのような多才な専門家はいるのでしょうか。
ハーバート・サイモンは1916年6月15日生まれのアメリカの科学者です。あえて“科学者”と表現するのは、サイモンの功績は1つの分野だけに収まるものではないからです。心理学に関しては、認知心理学や経済心理学(行動経済学)が専門領域となりますが、その他にも経営学・情報学・言語学・社会学・政治学・経済学など様々な分野に精通し、影響力の大きな理論を構築しています。サイモンはシカゴ大学で政治学の学位を取得後すぐにシカゴ大学の研究助手としてキャリアをスタートさせます。その後、アメリカの国際都市管理者協会に務めます。そして、1942年にイリノイ工科大学の講師を務めながら研究を続け、1943年に政治学の博士号を取得し、イリノイ工科大学の政治学の教授となります。このように、サイモンの初期のキャリアは政治学を中心としたものでした。
1949年にカーネギーメロン大学に移籍し、行政学と心理学の教授となります。さらに、1955年には当時としては最先端の技術・ツールであるコンピュータに関する大学教育に従事し、コンピュータ・サイエンスの教授にもなりました。また、1968年から1971年の間はアメリカの大統領・科学諮問委員を務めることになりました。これを皮切りに、サイモンはこれまでの功績が華々しく評価される時期に入ります。1969年にアメリカ心理学会の科学特別功労賞を受賞、1975年にはコンピュータ・サイエンスに関する研究が人工知能への貢献として評価されチューリング賞を受賞しています。さらに、1978年にはノーベル経済学賞を受賞し、1986年にアメリカ国家科学賞を受賞しています。
このように、サイモンの業績は多岐にわたるものですが、特に心理学の分野に限れば、 人間の認知心理学における意思決定や問題解決過程のモデル化が有名です。これは、意思決定の先に何かを購入することや、企業の経営判断などがあり、経済心理学・行動経済学にも強いつながりのある内容となっています。 サイモンが提唱した理論として一番有名なのが限定合理性です。人間は合理的な判断・評価に基づいた意思決定や選択行動をするはずである、というのがそれまでの経済学や心理学の考え方でした。しかし、サイモンは人間の認知能力には限界があり、計算処理能力にも限界があるので、最も高い効用(利益)を与えてくれる選択肢を探すという最大化は成り立たず、せいぜいこれで十分だと満族のいく選択肢を探すという満足化が精一杯であると考えました。これは人間が非合理的であるという意味ではなく、合理的な意思決定を“したい”とは考えているものの、それを実現することが非常に困難であるため、限定的な合理的活動をしているということです。
このように、心理学の分野にも1つの領域だけでなく、多岐にわたる分野で活躍したコペルニクスのような専門家がいるのです。
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