ノーベル賞と心理学には、どのような関係があるのでしょうか
【目次】
・まとめ
日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。12月10日は日本だけではなく、全世界の記念式典であるノーベル賞の授賞式となっています。ノーベル賞はスウェーデンの化学者であるアルフレッド・ノーベルが亡くなった日が12月10日であり、ノーベル賞はノーベルの遺言によって創設されています。ノーベルの命日である12月10日はノーベル賞の授賞式が行われています。ノーベル賞は物理学・化学・生理学医学・文学・平和・経済学の6分野があり、平和賞はノルウェーの首都オスロの市庁舎で、それ以外の賞はスウェーデンの首都ストックホルムのコンサートホールで授賞式が実施されます。受賞者には、賞金の小切手・賞状・メダルがそれぞれ贈られます。
賞の選考はノーベルが生まれたスウェーデンの研究機関が実施し、平和賞だけは、創設当時スウェーデンと連合王国だった関係でノルウェーで選考されます。また、賞ごとに選考委員会が作られ、世界中の大学や専門家に推薦依頼を送って、その返答をもとに受賞者が選ばれます。ノーベル賞は基本的に個人にのみ与えられる賞ですが、平和賞のみ団体の受賞が認められており、過去に「国境なき医師団(MSF)」(1999年)や「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」(2017年)などが受賞しています。2024年には被爆者の立場から核兵器廃絶を訴えてきた日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会が受賞しています。
では、ノーベル賞と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。
ノーベル賞には心理学賞は存在しないですが、経済学賞において、いくつか、心理学に関係した受賞があります。心理学の分野の1つに、経済心理学という分野があります。経済心理学は別名、行動経済学ともよばれ、経済学とも関係の深い分野です。また、人間の選択行動や意思決定、それを応用した消費者行動などとも関連しています。また、心理学の分野の中でも、学習心理学(行動分析学)や認知心理学、社会心理学、パーソナリティ心理学などの領域とも関係があります。これは、選択行動や物事や確率に対する認識(認知)、他者との協力や競争、就職先、進学先などの意思決定、選ぶことや決めることに対するパーソナリティ(性格)の影響など、様々な心理的過程が経済心理学(行動経済学)とつながりを持っているからです。
この行動経済学(経済心理学)に関連して、初めてノーベル経済学賞を受賞したのがハーバート・サイモンです。サイモンは1949年にカーネギーメロン大学で行政学と心理学の教授となり、さらには1955年には当時としては最先端の技術・ツールであるコンピュータに関する大学教育に従事し、コンピュータ・サイエンスの教授にもなりました。そして、1978年にはノーベル経済学賞を受賞し、1986年にアメリカ国家科学賞を受賞しています。
サイモンの業績は非常に多岐にわたるのですが、サイモンが提唱した理論として一番有名なのが限定合理性です。人間は合理的な判断・評価に基づいた意思決定や選択行動をするはずである、というのがそれまでの経済学や心理学の考え方でした。しかし、サイモンは人間の認知能力には限界があり、計算処理能力にも限界があるので、最も高い効用(利益)を与えてくれる選択肢を探すという最大化は成り立たず、せいぜいこれで十分だと満族のいく選択肢を探すという満足化が精一杯であると考えました。これは人間が非合理的であるという意味ではなく、合理的な意思決定を“したい”とは考えているものの、それを実現することが非常に困難であるため、限定的な合理的活動をしているということです。サイモンは、人間は満足化を追求するために最低限の受容水準(要求水準)をあらかじめ決めておき、選択肢がその要求水準を超えているかどうかだけを検討しているのではないかと述べました。1つ1つの選択肢を別個に評価できるという満足化の利点は、時間の経過に伴って1つ1つの選択肢が出て来るような場合には特に有効であると考えられます。
このように、心理学はノーベル賞の分野でも広がっており、法律や政策などでも活用されています。
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