私たちが仕事をすることとメンタルへルスには密接な関係があります。
私たちが日々、仕事をする中でストレスを感じたり、不安や怒りを感じること、疲れ切ってしまうことなどがあるかと思います。
仕事に関するポジティブな要素については、近年、健康経営やワークエンゲイジメントなどについて研究が進んでいます。
一方で、昔から仕事がメンタルヘルスに及ぼす悪影響についても研究が進められています。
つまり、心理学では仕事の持つポジティブな側面とネガティブな側面の両方からアプローチし、一生懸命に仕事をしつつもストレスの少ない状態を保つためには、どうすればいいのかということ研究によって明らかにしようとしているのです。
今回は、これらの側面の1つである、仕事とストレス等のネガティブな関係性に関わる3つのキーワードについて解説したいと思います。
仕事中毒はワーカホリックともよばれ、仕事に過度に没頭している状態のことを指します。
ただし、ワークエンゲイジメントとは異なり、日常生活のほとんどを仕事に打ち込み、たえず時間に追われて切迫感・焦燥感を持ち、仕事から離れると不安になってしまい、仕事に依存している状態を指します。
仕事中毒の状態の人は、仕事(活動)することでしか周りからの評価・賞賛は得られないという信念をもっており、当初は目的達成のために仕事をしていても、次第に仕事自体が目的となってしまいます。
この仕事中毒の状態にある人は、長時間労働が必要となる職場環境に加え、「仕事が全てに優先する」という価値観に基づいた個人のライフ・スタイルによって成立してしまっているものであり、個人のパーソナリティ特性としては、タイプA行動パターンと共通する要素が多いとされています。
フリードマンとローゼンマンらが虚血性心疾患の患者には、ある共通したパーソナリティ特徴があることを発見したことから、これをタイプA行動パターンと名づけました。
タイプA行動パターンは競争的・野心的・精力的であり、機敏・性急で常に時間に追われて切迫感を持ち、多くの仕事に巻き込まれており、身体面では高血圧や高脂血症が多いというものです。
また、敵意と怒りの感情の抑圧が最も危険な要素であるという研究報告も出ています。
タイプAの人は自らストレスの多い生活を選び、ストレスを多く受けているにもかかわらず、そのことをあまり自覚せずに過ごす傾向があります。
また、ストレスに対する反応も交感神経優位型の反応が現れやすく、血圧が上がる、脈拍が増えるなど循環器系に負荷がかかり、虚血性心疾患の発症に関係していると考えられています。
これらの特徴が仕事の面にも影響を及ぼし、仕事中毒(ワーカーホリック)の状態とも密接に関連しています。
フロイデンバーガーによってはじめて指摘された心身の症候群のことで、マスラックによると「極度の身体疲労と感情の枯渇を示す症候群」であると定義されています。
これが、いわゆる第三次産業とされるヒューマン・サービス従業者に多発しているといわれています。
臨床的あるいは事例的な研究とともに、マスラックの開発したMBI(Maslach Burnout Inventory)というバーンアウト(燃え尽き症候群)に関する尺度も存在します。
MBIは心身ともに疲れはてたという感覚(情緒的消耗感)、人を人と思わなくなる気持(非人格化)、仕事へのやりがいの低下(個人的達成感の減退)という3要素の程度を測定するものとなっています。
ヒューマン・サービス従業者のバーンアウトをいかに防止するかについて、ヒューマン・サービスそのものの課題的特性、その組織の構造的特性、従業者の個体的特性、ヒューマン・サービスをめぐる社会的な認識という四つの視点から多くの提言がなされ、また具体的な実証的研究も多数行われている。日本では特に、介護福祉関連・コールセンター関連などの業種でバーンアウト(燃え尽き症候群)が多いとされています。
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