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世界高齢者虐待啓発デーと心理学の関係

2024.6.6
  • DSM-5
  • ストレス
  • 心理学

世界高齢者虐待啓発デーと心理学には、どのような関係があるのでしょうか。

【目次】

6月15日は「世界高齢者虐待啓発デー」

虐待と心理学とは

虐待という経験が共通してもたらすものとは

DSM-5における見方

まとめ

 

6月15日は「世界高齢者虐待啓発デー」

日本では365日の全てに何らかの記念日が制定されています。6月15日は国際デーでもある「世界高齢者虐待啓発デー」に制定されています。これは、2011年の12月に開催された国連総会で制定されたものであり「World Elder Abuse Awareness Day」という英語表記の名称があります。

現在、日本は高齢化が進んでおり、非常に多くの高齢者の方々が生活しています。そして、これは日本だけではなく、全世界的に高齢化が進んでいます。そして、高齢化社会が加速していく中で、高齢者への虐待の問題も増回傾向にあります。しかし、まだ具体的な件数の把握や、対策の制定ができていないケースが多く、日本だけの問題はなく、世界的な問題となっています。

 

虐待と心理学とは

では、虐待と心理学には、どのような関係があるのでしょうか。厚生労働省は虐待を4つに分類しています。

1.身体的虐待(殴る・蹴る・叩く・投げ落とす・激しく揺さぶる・火傷を負わせる・溺れさせる・首を絞める・縄などにより一室に拘束するなどの行為)

 

2.性的虐待(子どもへの性的行為・性的行為を見せる・性器を触る又は触らせる・ポルノグラフィの被写体にするなどの行為)

 

3.心理的虐待(言葉による脅し・無視・兄弟姉妹間での差別的扱い・子どもの目の前で家族(兄弟姉妹など)に対して暴力をふるう(DV)などの行為)

 

4.ネグレクト(家に閉じ込める・食事を与えない・ひどく不潔にする・自動車の中に放置する・重い病気になっても病院に連れて行かないなどの行為) 高齢者に対する虐待も基本的には同様の傾向が認められますが、高齢者に特有の問題として、勝手に年金や預貯金などを使われるという経済的虐待が含まれます。

 

高齢者に対する虐待も基本的には同様の傾向が認められますが、高齢者に特有の問題として、勝手に年金や預貯金などを使われるという経済的虐待が含まれます。 虐待は社会的な問題であると同時に、心理学的な問題でもあります。虐待はその発生の瞬間にも大きな問題であると同時に、心理学的・精神医学的には、長期的な問題として捉えられています。心理学・カウンセリング・メンタルケアにおいて、虐待は精神面に多大な悪影響を及ぼす要因の1つと考えられています。

 

虐待という経験が共通してもたらすものとは

虐待には前述の通り、様々なケースがありますが、虐待という経験が共通してもたらすものに「不安」・「不信」・「一貫性の無さ」というものがあります。これらをより具体的に述べると「対人関係全般に対する強い不安」・「他者全般に対する強い不信感」・「養育環境が不安定であったことによる変化への敏感さ、もしくは鈍感さ」といえます。心理カウンセラーは虐待の被害者がクライアントとして来所した場合、クライアントにとって初めて「安心」して、「信頼」できて、「一貫性」のある態度・環境を提供できる人物となることが望まれます。これは来談者中心療法による傾聴を中心としたカウンセリングにおいても、具体的な心理療法の実施段階になっても同じで「安心」・「信頼」・「一貫性」の3つが重要なキーワードとなります。そして、虐待の影響が心身面の症状として現れることがあり、その症状は神経発達症(発達障害)の症状との類似点が指摘されています。

 

DSM-5における見方

精神疾患の診断マニュアルであるDSM-5には、「不十分な養育の極端な様式を経験している」という診断基準が設けられている精神障害があります。この「不十分な養育の極端な様式を経験している」に含まれるのが養育者によるネグレクトなどの虐待や、養育者(里親を含む)の頻繁な変更、環境が整っていない施設での養育などです。これらの原因による疾患は、疾患分類として、心的外傷後ストレス障害と同じ区分に分類されます。

「不十分な養育の極端な様式の経験」というものに含まれる虐待・ネグレクトが養育者への不信感を生じさせ、それが今後の全般的な対人的コミュニケーションへの強い不安を発生させます。これは当事者の精神的な問題というだけに留まらず、学校・会社などの社会生活へも広がり、長期的で重大な問題となっていく可能性があります。そして、本来の養育者から離れて里親などによる養育となった場合に、養育者-里親間で養育内容が異なっていることが、まだ幼い子どもにとっては「一貫性の無さ」として認識されます。本来の養育者である両親と里親の自分への対応が全く異なるにも関わらず、どちらも「自分の親」であるという事実は、子どもの対人認知をとても混乱させる要因になってしまいます。

 

まとめ

このように、虐待は心理学において様々な角度から研究が続けられており、近年では高齢者への虐待についても注目が集まっています。


著者・編集者プロフィール

この記事を執筆・編集したのはこころ検定おもしろコラム編集部 「おもしろコラム」は、心理学の能力を測る検定試験である「こころ検定」が運営するメディアです。心理学・メンタルケア・メンタルヘルスに興味がある、検定に興味がある、学んでみたい人のために、心理学を考えるうえで役立つ情報をお届けしています。